メディアおよびエンターテインメント向けの Unreal Engine 5.3 の新機能

今やメディアおよびエンターテインメント業界では Unreal Engine をプロダクション パイプラインに取り入れる動きが加速しており、すでに 600 以上ものメジャーな映画やテレビ番組シリーズで活用されているほか、さまざまなアニメーション コンテンツ制作における効率と独創性の向上にも貢献しており、ブロードキャストとライブ イベントにおける新たな可能性を引き出しています。

Epic では、最近のいくつかのリリースを通じて映画関係者やクリエイター向けの一連の機能を拡張し、改善してきました。こうした革新的な機能をベースとして、Unreal Engine 5.3 の最近のリリースにはバーチャル プロダクション用のツールセットに対する大幅な更新だけでなく、その他のさまざまな機能セットに対する改善が含まれています。また、次世代の ICVFX ステージに対応する準備も整っています。

SMPTE ST 2110 の nDisplay サポート

Unreal Engine 5.3 には、LED ステージの構成に対する将来的な変更をサポートする基礎となる、SMPTE ST 2110 の nDisplay に対する実験的なサポートが加えられています。初期のサポートは NVIDIA ハードウェアとその Rivermax SDK に向けたものです。

米国映画テレビ技術者協会 (SMPTE:Society of Motion Picture and Television Engineers) によって開発されたこの新しいスタンダードにより、IP を介した動画の転送が可能になります。

バーチャル プロダクションの点においては、このスタンダードに対する Unreal Engine のサポートにより、ステージ オーナー、バーチャル アート部門 (VAD)、VFX スタジオに向けて、LED ステージへのビデオ フィードのルーティング設定におけるさらなる柔軟性が提供されます。これにはレンダリング ノード間で錐台を共有する機能も含まれており、より高解像度での表示や、ハードウェア リソースのさらなる有効活用が可能になります。
複数のカメラを使った撮影では、各カメラの錐台に専用マシンを利用して潜在的なレンダリング解像度を最大化し、フレーム レートを向上させて、以前よりも複雑なシーン ジオメトリやライティングを可能にするという明るい見通しが提供されます。また、より広角なレンズで必須となる追加の解像度に関する課題にも対処できます。

さらに、別のメリットとしてレイテンシーの低下が挙げられます。これは信号チェーンの簡素化によるもので、DisplayPort から HDMI への変換の必要性が省かれるためです。

現在の構成は今日のオンセット バーチャル プロダクションに関するニーズを満たすものであり、新しいスタンダードへの準拠には一晩では達成できないさまざまな変更が必要になりますが、新たな LED の設定を現在計画している場合や、数年内にそうした設定を予定している場合は、近日公開予定のホワイトペーパーで、その意味合いやメリット、課題についての詳細を確認できます。


バーチャル カメラ (VCam) の追加機能

当社では Unreal Engine の VCam システムについても改善を継続しています。UE 5.3 では、イテレーションを高速化するために iPad 上でテイクを直接レビューする機能、チーム メンバーごとに異なる VCam 出力を同時にストリーミングする機能 (カメラのオペレーターにはカメラのコントロールを与え、ディレクターにはコントロールを与えないなど)、共同での VCam 撮影を促進する機能、遅いフレーム レートでレコーディングして通常の速度で再生することで、動きの速いアクションのキャプチャを容易にする機能が改善されています。さらに、ゼブラストライプのパターンを使って、カメラ ビュー内で過度な露出領域を特定する機能もあります。

Cine カム リグレール

VCam とインエディタの各ワークフローに統合された新しい Cine Cam Rig Rail アクタを使用することで、映画制作者はトラックや台車に沿った従来のカメラの動きのワークフローと結果をエミュレートできるようになり、iPad 上で「レール トラックに乗る」ことさえ可能になります。Cine Cam Rig Rail では既存の Rig Rail よりも細かな制御が可能で、これにはカメラの回転、焦点距離、シーケンサーでの撮影距離など、パス上のさまざまな制御ポイントにおける設定を統制する機能が含まれます。

Unreal Stage iOS アプリ

UE 5.2 の公開直後にリリースされた Unreal Stage アプリは UE 5.1 で導入された専用のインカメラ VFX エディタを反映するものですが、タッチ画面での使用に向けて UI が調整されています。これにより、ステージ オペレーターは舞台から離れた場所にあるワークステーションに移動しなくとも、舞台袖から LED ボリューム内で色やライティングを迅速かつ簡単に調整できるようになります。
このアプリでは、ライト カードとフラグの配置や、LED ボリュームのライブ カラー グレーディングの調整、UE コンテンツに対するターゲット カラーの調整、タレント周辺へのクロマキー カードのドロップ、Web リモート コントロール ツールセットでビルドされたカスタム ウィジェットへのアクセス (太陽の配置を制御するためなど) が可能です。
この使用方法の詳細については、Epic Developer Community にあるこちらの オンライン コース を参照してください。


アナモフィック レンズのキャリブレーション ソルバ

Unreal Engine のカメラ レンズのキャリブレーション機能で歪みのアナモフィック レンズの解決がサポートされるようになり、映画制作者はデジタル コンテンツ内でライブアクション映像の歪みとこれらのレンズをマッチングできるようになりました。また、この機能を利用して特定のレンズの歪みプロファイルを完全な CG コンテンツに適用することで、よりフィルム調の雰囲気を醸し出すこともできます。


レンダリングの改善点

最新版のリリースでは、すべての主要な UE5 レンダリング機能の改善が継続されています。これには Nanite、Lumen、バーチャル シャドウ マップ、テンポラル スーパー解像度、ヘア グルーム、パス トレーシングが含まれており、より高品質な結果や向上したパフォーマンスを実現できます。UE5 の新しいマテリアル オーサリング システムである「Substrate」は UE 5.3 ではまだ実験段階の機能ですが、今回のリリースではさらなる開発が行われました。

プロシージャル コンテンツ生成 (PCG)

同じ実験段階にある新ツールとして、UE 5.2 で導入された「プロシージャル コンテンツ生成 (PCG) フレームワーク」があります。PCG では、迅速で反復的なツールや、建造物またはバイオームの生成といったアセット ユーティリティから、ワールド全体に至るまでのあらゆる複雑度のコンテンツをビルドできます。まだご利用でない場合は、サンプル プロジェクト をダウンロードしてこの機能をご自身でお試しください。

その他の新機能や追加機能

これらは UE 5.3 の新機能のごく一部であり、そのほかにも、openVDB インポートをサポートする、パストレースされたボリュメトリック レンダリングや、新しくなったスケルタル エディタ、パネルベースの Chaos クロス、エンジンでよりクリエイティブなワークフローを実現するためのさまざまな実験的新機能が備わっています。
OpenVDB Asset courtesy of JangaFX
Unreal Engine 5.3 に加えられたすべての新機能については、そのリリース ノートをお読みください。

今すぐ Unreal Engine 5.3 をダウンロードしましょう!

Unreal Engine をすでにお使いのユーザーは Epic Games Launcher から Unreal Engine 5.3 をダウンロードできます。Unreal Engine を初めて利用する場合は、以下のリンクをクリックして開始してください。いずれの場合も、すべての新機能とアップグレードをお試しいただけます。