2019年10月30日

テトリス エフェクトが現代芸術となるまで

作成 Jimmy Thang

元々 PlayStation 4 向けに昨年リリースされ、後に PC 向けも発表されたテトリス エフェクトは、引き続き 高い評価 を得ています。なかでも PCWorld は「テトリス エフェクトはテトリス ゲームを超えている。ブロックを積み、段を消すことで引き起こされるインタラクティブな芸術作品だ。」と評しました。

開発チームがいかにして VR や UE4 などの新技術を用いてテトリスを現代に蘇らせたかを知るべく、私たちは Enhance Games 社のProduction & Biz Dev でバイス プレジデントの Mark MacDonald 氏と Monstars の CTO でテトリス エフェクトのテクニカル ディレクターを務める内田貴規氏にインタビューしました。不朽の名作をリメイクする原動力や、プレイヤーが未体験の強烈な刺激を加えつつ、フロー状態へ導くゲームのシュール レアリズム性や、異次元な映像を作り上げるにあたっての工夫点について語っていただきました。また、テトリス エフェクトの映像と荘厳なサウンド トラックが互いにどう影響しあったかについても語っていただきました。   

さらに MacDonald 氏に、テトリス初心者には優しい一方で、熟練プレーヤーには絶妙なさじ加減で奥深さを感じさせる新たな ゾーン機能について語っていただきました。また、テトリス エフェクトの新ボーナスモードが社内ゲームジャムから誕生したことを明かしてくれました。内田氏は最後に、今日の歴史的成功を支える、Unreal Engine の具体的なツールや、ブループリントやソースコードへのアクセス機能といったコンポーネントの重要性についても触れています。 
なぜテトリスをリメイクしようと思ったのですか? 

Enhance Games 社 Production & Biz Dev バイス プレジデント Mark MacDonald 氏:オリジナル版の Rez を開発した後 「音楽的なテトリス」の構想が浮かびました。遡ること Sony PSP の発売前です。当時テトリスにはライセンスの問題があったためテトリス関連の作品を作れませんでしたが、PSP 版のルミネスの誕生に繋がっていきました。それ以来、みんなが知っていてすぐに飲み込めて、すんなりプレイできるテトリスの正統派ゲームを作りたいと思っていました。

水中から、月面へ、オーロラを突き抜けたりと、数々の息を飲むようなテトリス エフェクトのレベルはまさしく芸術作品です。どのようにこの夢のようなグラフィックスのゲームを設計し実現したのですか?

MacDonald 氏:まずはじめに、ベースとしてグラフィックスのほぼすべてに パーティクル を採用しました。音楽への反応が非常に優れていたからです。それから、現実と超現実をミックスして、既視感がありながらも別世界のような、仰ったような夢のような世界を作ろうとしました。イメージした映像になるまで何度も何度もやり直しましたが。
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催眠術のような映像に五感が圧倒されそうになりました。新たな挑戦は意図的なものだったのでしょうか?

MacDonald 氏:意図的だったところもあります。プレーヤーを「ゾーン」あるいは「フロー状態」に導く、興奮とリラックスのサイクルを作ろうとしました。緩急のある音楽と映像はそのための手段でした。同時に、吐き気を催したりゲーム プレイの妨げになるような映像の問題を回避するのに膨大な時間を費やしました。幸い、良いさじ加減が見つかりましたが、プレイヤーがこの種の効果を減らせるオプションも付けました。

テトリス エフェクトの幻想的でエレクトロなサウンドトラックはゲームの異世界な映像と完璧に融合していますね。映像美が音楽に影響を与えたり、逆に音楽が映像に影響を与えたりといったことはあったのでしょうか? 

MacDonald 氏:互いに影響し合っていましたね。よく行ったり来たりしてましたね。ビジュアル アーティストはミュージシャンの作品を聴いて映像に変更を加え、それがまたミュージシャンをインスパイアして音楽の方向性を変えたりといった感じで。 
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テトリス エフェクトではゾーン機能が導入されました。プレイヤーは、貯めて時間を遅らせるメーターの積上げが利用可能になりました。この技によって、初心者はより長い時間生きながらえ、ベテラン プレイヤーはかつてない大きさのコンボを作ることが可能になりますが、ここでの設計のゴールについて説明して頂けますか?

MacDonald 氏:大切だと思ったものを実装しつつも、長年愛され続けている「純粋な」テトリスのゲームプレイに干渉しないものが作ろうとしました。それと、おっしゃったように、初心者にも、長年ゲームをプレイしてくださっているプレイヤーにもアピールするものを作ろうとしました。

やはり実験を繰り返すことが鍵でした。様々なアイディアを何度も何度も試して、最終的に 2、3 個に絞られていきました。そのひとつが時間です。時間を止めたり、リバースするといったものですね。そこから、若干微調整しましたが、ゾーンへ導くことは完成したラインをすぐにクリアしないアイディアでした。
テトリス エフェクトの特徴として、名作テトリスのゲームプレイにひと味加えるモードがたくさんあります。たとえば、爆発性のテトロミノをプレイヤーが不発にしなければならなかったり、面全体をひっくり返すといった仕組みがあります。このような愉しくて新しい解釈のテトリスをスタジオはいかにして制作したのですか?

MacDonald 氏:内部で小規模なゲームジャムをしました。テトリスのルールを新たに思いついた人がチームに売り込み、その中でも有望そうなものはプロトタイプを作り、面白かったものを製品化しました。やはり何度も何度も実験することが鍵でした!幸い、Unreal によってこれらのことを、比較的速く簡単かつ低コストで実現できました。
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テトリス エフェクトと Rez Infinite の2 作品ともに VR 互換ゲームですが、これまで携わってきて、VR に関してどのような考えをお持ちでしょうか?

MacDonald 氏:私たちは VR の可能性と将来を心から信じています。今はまだ黎明期ですね。世に出てまだ数年のハードウェア媒体で動く「伝説」のゲーム Pong にかなり似ているものの、既に驚くべきエクスペリエンスを目の当たりにしています。ハードウェアが安く、軽く、簡単に操作可能になるのは必定で、それに伴いゲームも進化するでしょう。もう既に VR にとって良い時代ですが、5 - 10 年後には VR が真に主流となる転換点が到来するでしょう。

ゲームに携わったチームの規模はどの程度でしたか?

MacDonald 氏:外注の数などで変わりましたが、約 15 人くらいでした。
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UE4 がこのゲームに適していた理由は何でしょう?

Monstars CTO 兼テトリス エフェクト テクニカル ディレクター 内田貴規氏:UE4 がこのゲームに適していたのは、アーティストがより自由に映像を扱うことができたからです。なかでも マテリアル エディタ とパーティクル エディタの使用が容易で、開発プロセスの高速化に貢献しました。また、UE4 は VR のサポート に優れており、2D と VR を並行してデバッグするのが容易でした。パーティクル システムの ソースコード が公開されているので、欲しい映像を得るための拡張と最適化が可能です。そうすることでまた、UE4 がこのゲームに最適なものとなりました。

スタジオでお気に入りの UE4 のツールや機能はありますか?

内田氏:ブループリント とマテリアル エディタ が私たちのお気に入りです。UI もよく考えられていて直感的です。巨大なブループリントの関数やマテリアル ノード ライブラリの検索が簡単です。また、マテリアル エディタ内での変更がリアルタイムで即座に反映される点も非常に気に入っています。

貴重なお時間をありがとうございました。どこに行けばテトリス エフェクトについてもっと知ることができますか?

MacDonald 氏:  ありがとう!私たちの ウェブサイト 、 Twitter @enhance_expInstagram で情報提供しています。