The Walking Dead Onslaught  - Survios の大ヒット VR ゲーム

画像提供:AMC | Survios
Jimmy Thang |
2020年10月2日

2013 年に設立された Survios は、プレミアム ソフトウェアの開発、ゲーム配信、ロケーションベース エンターテイメント (LBE) に特化した業界をリードするバーチャル リアリティ (VR) スタジオです。Survios では、まったく新しい双方向性と、人間の体験を拡張して創造的な潜在力を解放するようにデザインされた直感的なプレイにより、世界とのつながりを持った没入型の VR エクスペリエンスを制作しています。 
Survios は業界で最も有名な VR ゲーム デベロッパーの 1 つです。ロサンゼルスに拠点を置くこのスタジオが最初にその頭角を現したのは、Raw Data という素晴らしい作品をリリースした時でした。その後も次々に Sprint VectorCreed:Rise to GloryWestworld:Awakening などのすぐれた VR 作品を世に送り出しました。Survios の最新作品である The Walking Dead Onslaught は、AMC の人気テレビ番組を題材にしたスタジオ最大のヒット作品です。デベロッパーがどのようにしてこれを成し遂げたのか、ゲーム ディレクターの Andrew Abedian 氏、アート ディレクターの Tate Mosesian 氏、そして最高技術責任者 (CTO) の Alex Silkin 氏にインタビューしました。
 
3 人はドラマに登場するアセットをモデリングしてテクスチャリングすることで、プレイヤーを The Walking Dead のエピソードに入り込んだ感覚にさせることを目標として熱心に作業に取り組んだ様子を話してくれました。また、ヒットしたテレビ ドラマのプロデューサーや俳優たちとの共同作業がどのようなものだったかについても詳しく教えてくれます。技術的な面では、ゲームの武器のデザイン方法や VR の身体的な境界線をどのように押し上げたのかについて説明します。さらに、特定の Unreal Engine ツールを使用して、パフォーマンスを維持しながら VR で 30 人のウォーカーを同時に画面上に表示させるためにゲームを最適化した方法についても教えてくれます。
Survios とドラマ The Walking Dead の作家やプロデューサーたちとの関係性やワークフローはどのようなものだったのか教えてください。

Andrew Abedian 氏 (ゲーム ディレクター):AMC チームとの作業や番組のプロデューサー、作家、それに出演者との交流は素晴らしいものでした。このようなレベルのコラボレーションでは、AMC の The Walking Dead の雰囲気を再現して私たちのゲームに組み込むことが重要な鍵でした。キャラクターをリアルに感じ、そしてキャラクターがそれらしく話し、聞こえるのは、このコラボレーションだからこそできたものです。このプロジェクトの開発期間中、AMC とはすべての協議で一緒に話し合い、私たちチーム同士で健全な対話をするように心がけてきました。
 
たとえば Alexandria のように、ドラマに登場するエリアがゲーム内で再現されています。The Walking Dead Onslaught でドラマの景色を再現するにあたり、どれくらいリサーチしましたか?
 
Abedian 氏:開発を始めた時から、ゲームの世界を AMC の The Walking Dead のエピソードの一部のようにしたいと思っていました。そこで、Onslaught の環境用参考資料として使用するために、膨大な時間をかけて番組のこれまでの映像や写真を調査しました。Alexandria の場合は、町で実際に舞台となった場所の衛星画像を見て、シーズン 9 の拡大版から集めた参考画像と照らし合わせて表にしました。ゲームでは同じ種類の素材を使い、建物は同じ構造にすることにしていましたが、さらに町の測量まで行い、それをレベルのグレーボックス テストを始める時の出発点としました。これにより空間はすぐに「正しい」と感じられ、ユーザー エクスペリエンスや技術的な理由により小さな変更を行う場合も、本物の Alexandria 感を損なうほどのことは起きませんでした。
 
Tate Mosesian 氏 (アート ディレクター):Alexandria のビジュアル デザインについては、かなりリサーチを行いました。考慮しなければならない特定のゲーム デザインの要件もありました。しかし、ゲームで Alexandria の景色を作成する際に最優先される目標は、実際に Alexandria にいるように感じさせること、そして安全であると感じさせることでした。それを忠実に実現するために、私は Alexandria のエピソードをまるで住民になったような気がするまで、そして生存者たちが自分たちの町として開発し始めたその目的と動機がわかったような気がするまで何度も見返しました。レベルにあるすべてのアセットはドラマに忠実にモデリングされ、テクスチャリングされています。 
ドラマの中で完成していたものに敬意を払いながらゲームに合わせてレベルをデザインすることについて、どのようにアプローチしたのですか?
 
Abedian 氏:チームのみんなには、それぞれお気に入りのエピソードがありました。それらのエピソードの中に、特に私たちが開発期間中にこだわった環境的な特徴があります。穏やかな森の中を走り抜ける時も、混雑した高速を横切る時も、作り替えられた町に入り込む時も、その特徴がゲームのレベルでも垣間見えるようにしたいと考えました。 
 
ドラマを見ていると、ウォーカーと対峙してキャラクターが移動する環境の種類は非常に豊富です。私が気に入っている場面は、リックとギャングが市街地の建物の中に入っていったり、町の商店へ入っていくようなシンプルなものです。大きく広がる場面から狭くて窮屈な空間に、いつウォーカーが出てくるかもしれない恐怖を感じながら進んでいく気持ち。それはテレビで楽しむだけでなく、レベルのデザインにも緩急を与えます。ゲームの Scavenger モードでは、そのような緊張感がありつつも安定した状況から、致命的で無秩序な狂乱が始まる場面をそのままモデルにしています。
 
Norman Reedus 氏が演じている Daryl Dixon はファンに人気があり、作品の主要キャラクターの 1 人です。ゲームの仕事でドラマのスターと一緒に作業するのはどのようなものでしたか?
 
Abedian 氏:Norman Reedus 氏 (Daryl 役)、Melissa McBride 氏 (Carol 役)、そして Josh McDermitt 氏(Eugene 役) のような俳優と一緒に仕事をする機会を持てたことにとても感謝しています。ドラマの本物の俳優がその役をもう一度演じたことにより、シナリオが次のレベルへと引き上げられるだけでなく、すぐにゲームが AMC の The Walking Dead のように感じられるようになりました。Norman 氏は特に、パンデミックの真っただ中に追加のレコーディング セッションに応じてくれた英雄です。事業的な問題が多々あり、もちろんセッションはリモートで行いましたが、あの時に彼と作業できたことが私たちの世界を全く違うものにしてくれました。こちらは、間に合わせで作った Norman氏 の地下アテレコ室でのビデオです。 
 
TWDO CharacterShowcase
 
The Walking Dead Onslaught では VR ロコモーション (移動) をどのように処理していますか?また、過去の VR 作品から学んだことがあれば教えてください。
 
Alex Silkin 氏 (CTO):プレイヤーの幅広い好みと VR の快適性を満たすため、プレイヤーにはさまざまな選択肢を提供できるように努力しました。ゲームは 3 つのロコモーション スタイル、Teleport (テレポート)、Fluid (腕の振り幅)、そして Smooth (ジョイスティック) でプレイすることができます。これらのシステムの実装は、過去の作品における実験から進化したものです。Teleport を使用すると、プレイヤーは即時遷移により VR では最高の快適性を得ることができますが、Raw Data の Teleshift ロコモーションに基づいた高速の補間遷移オプションを有効にするという選択肢もあります。Onslaught の Fluid ロコモーションは、あの非常に高速な Sprint Vector で最初に登場し、ゆっくりとした速度の Westworld Awakening にも適応された動きをより簡素化して実装したものです。最後の Smooth ロコモーションは一般的に強い VR 慣れを必要とするスキームのため、プレイヤーの快適性を確保するために Raw DataWestworld Awakening の経験から学んだことを利用して調整しました。同様に、回転のオプションは 4 つ、Snap、Swift、Smooth、および Disabled を提供しています。Swift 回転は、私たちの今までの作品と同じように素早く遷移します。Snap 回転は遷移のない、瞬間的なものです。これは過去の作品で Swift 回転を使用して不快感を感じた一部のプレイヤーからのフィードバックに基づいて追加されました。
 
VR 開発の世界におけるパイオニアとして、Survios が The Walking Dead Onslaught の際に参考にした VR 作品があれば教えてください。
 
Silkin 氏:The Walking Dead Onslaught は私たちの過去の作品、Creed:Rise to GloryRaw Data で培った社内技術と知識に戻づいて開発されたものです。しかし、VR 界における他の先駆者たちには感謝しています。私たちはこの新しいメディアのスタンダードとベスト プラクティスを定義するために、一緒に協力してきた気がします。まずは Arizona Sunshine に触れずにゾンビ VR ゲームについて語ることはできません。このゲームのおかげで、線形にストーリーが進むゾンビ VR シューティングゲームのスタンダードが完成しました。他に私たちがインスピレーションを受けた初期の重要な草分け的なゲームには Blade & Sorcery があります。これは、私たちが市場で最初に見つけた近接戦闘武器の能力を表した素晴らしいサンプルの 1 つです。
The Walking Dead Onslaught は近接戦闘の制約と Progressive Dismemberment (段階的部位切断) システムによって VR の身体性を推し進めることを目標にしています。それらのメカニズムがどのように機能するのか、また、このようなアイディアになった経緯について詳しく教えてください。
 
Abedian 氏:The Walking Dead Onslaught の制作を開始した当初は、Sprint Vector を開始した時と同じように、大きな問題をゲームの核とすることで解決しようとするアプローチを行いました。今回、番組をビデオ ゲームのフォーマットに変換することを想定した時、生存者とウォーカーとの間の戦闘の物理的な性質について考えました。それは押したり、首を絞めたり、投げつけたり、すべてが非常に実践的でした。以前にも近接戦闘の難しさには Raw DataCreed:Rise to Glory で取り組んでいましたが、私たちはプレイヤーがさまざまな方法でウォーカーと有意義にインタラクトできるように手助けするまったく新しいシステムを開発しました。これは私たちが解決したいと考えていた大きなインタラクションの課題でした。バットや刀、斧を使用する際の違いには意味があることを表す技術を作成することに深い価値があると考えていたからです。  
 
Progressive Dismemberment は、ドラマで登場したウォーカーに関する知識への信頼性、つまり The Walking Dead チームが一貫して大成功させていた大量殺りくを維持しようとした時に必要なコンセプトとして思いつきました。傷を負い、体の一部分を失い、今にも崩れ落ちそうなウォーカーたちを作り出し、Onslaught の戦闘シーンがドラマの映像と一致するようにしました。プレイヤーはゲームの進行に合わせて武器を揃えていきながら、ウォーカーが崩壊していくレベルを体験できるようにしました。また、Progressive Dismemberment の大きな利点は、先ほど説明した近接戦闘システムに対して十分に満足できるフィードバックの手段を提供できることです。 
 
CarolArmory Watermarked
 
The Walking Dead Onslaught には野球用のバットからショットガンまで、数多くの武器が用意されています。種類が豊富で現実的で、さらに満足感のある武器を追加するために、どのようにアプローチしましたか?

Abedian 氏:ゲームで用意されている武器はすべてドラマに登場したものです。ただし、実際に存在する特別な弾倉式レバーアクションのレイダー ショットガンだけは違います。願望を満たすためにメイン キャストの象徴的な武器を選択してゲームに追加することは簡単でしたが、同時にインスピレーションを得るためにより大きなゾンビ ジャンル全体に目を向けてみました。私たちはそれぞれの武器が特定のテーマに沿ったアーキタイプとなり、戦闘での存在感を持たせようと考え、主要な武器の種類だけでなくサイズも数多く提供し、ハンマーやバット、シャベルなど鈍器の選択肢も用意しました。同様に、ゲーム内の範囲攻撃武器にも同じ考えを持っています。それぞれの火器はさまざまな戦闘範囲で最適に機能し、アップグレードによりいろいろな進化を遂げます。ゲーム内の武器は、すべて感触が異なるように調整されています。それぞれに特徴のあるエフェクトがあり、ウォーカーにさまざまなレベルのダメージを与えることができます。私たちはすべての機能が現実的であるように努めましたが、より強力な戦闘ベースの視点でそれらの武器による戦闘を考え、シミュレータースタイルのメカニズムに不満を感じるよりも、スムーズなユーザー エクスペリエンスを実現させようとしました。 
 
先ほど最大 30 人のウォーカーを同時に画面上に表示できるとおっしゃっていましたが、VR ではとんでもない数です。パフォーマンスを抑制しながら、どのようにそれを実現させたのか教えてください。
 
Silkin 氏:以前に VR 作品をシッピングした技術と経験から習得したものを利用しました。しかし、既存のシステムや新しいシステムの最適化には、かなり努力が必要でした。私たちのゴールは、切り刻むことができる大量の敵との物理主導型の戦闘を提供することでしたが、これは特に物理、AI、そしてパーティクルを考慮した場合に CPU に負荷をかけることが証明されました。Walking Dead OnslaughtUnreal Engine 4.23 を使って世に送り出した最初のプロジェクトでした。私たちは運よく新しい Unreal Insights プロファイラを使用して CPU のボトルネックを素早く特定することができました。Insights のビジュアル インターフェースでは、さまざまなシステムに関連するコストの確認、いろいろなスレッド全体のアイドル タイムの識別がとても簡単です。これによりマルチスレッドのボトルネックとその機会の識別が、以前の Unreal Engine プロファイラよりも高速に行うことができました。その結果、この作品では、以前と比べてより多くのシステムを並列化することで Unreal の TaskGraph システムを活用しました。他の Unreal の技術で私たちのゲームに特に関連するものには、Animation Budgeting および Significance システムがありました。これらのシステムにより、プレイヤーの目の前にある品質を犠牲にすることなく、遠くにいたり画面に映っていないウォーカーの更新やアニメートを行うサイクルを減らすことができました。
ゲームは人工的な光が乏しい世紀末的な場所を舞台にしているため、Survios は以前、ゲームの大部分で自然光を使用するというライティングの困難さについて語られていました。この問題はどのように克服されたのでしょうか?
 
Mosesian 氏:ゲームのライティングは挑戦的な取り組みでした。その大部分において、私たちが使用できるのは自然光のみに制限されていたからです。ゲームの大半は日中に起こり、プレイヤーは常にウォーカーを探しながら明るい外から暗い影のある建物内に移動しています。これにより、とても明るい開けた空間と狭い不気味な空間との良いバランスが作り出され、その場に漂う緊張感を強めてプレイヤーがミッションを遂行する時の恐怖感と緊迫感が加えられました。
 
なぜ Unreal Engine がこのゲームに適していると思われましたか?
 
Abedian 氏:正直なところ、The Walking Dead Onslaught の開発に他のエンジンを使用することなど考えられませんでした。Unreal くらい膨大で品質の高いツールを提供してくれるエンジンは他にありません。私たちのゲームでは、Unreal Engine のありとあらゆるコンポーネントを利用しています。それらのツールを手軽に使用できなければ、今のような機能を持つゲームを作ることはできなかったでしょう。
 
Silkin 氏:Unreal Engine は両方の世界の最善のものが備わっています。一方で Unreal Engine は最先端の AAA ツールを提供しています。もう一方で、デベロッパーは ソース コード にアクセスすることができるため、思いのままに既成概念を打ち破り、エンジンの (標準的な) 能力を超えて革新することができます。 
開発初期、The Walking Dead Onslaught は協力プレイが搭載される予定でしたが、Survios は最終的に、より洗練されたシングルプレイヤー エクスペリエンスの制作に焦点を置くことにしました。なぜそうしようと思ったのですか?
 
Abedian 氏:これは正直なところ、プロジェクトでは最も難しく、最も痛みを伴う決断の 1 つでした。そして追加のシングルプレイヤー機能にリソースを振り分け直すため、自分たちがどこにいて、何を成し遂げようとしていたのかを分析しましたが、それには数か月かかりました。私たちが目指していたビジョンと洗練さのレベルを組み合わせて時間と品質の問題を考えた結果、効率的にマルチプレイヤー機能をカットすることにしました。私たちは、プレイヤーが紙で機能の欄にチェックを入れるようなゲームを送り出すことは絶対に嫌でしたから、正しい判断だったと思います。しかし、実際のところは悔しく、意気消沈した経験となりました。もしマルチプレイヤーを推し進めていたとすれば、欠陥が発生した可能性があるだけではなく、開発中もそれを維持するためのリソースを割くことになり、ゲームの他の部分の品質が損なわれる可能性がありました。多くのプレイヤーは、平均的な製品でマルチプレイヤーにかかる投資がどれほど大きいものかを理解していません。しかし、私たちが開発していたすべての実験的な機能の上にそれを積み上げることは、大惨事を招きかねないものでした。 
 
最終的に重要だと判断したことに焦点を定めることで、私たちは決定に自信を持ちました。The Walking Dead のブランドを忠実に表現し、他にはない方法で楽しく、自由な戦闘を提供し、さらにプレイヤーには Alexandria や進化する武器、そしてキャンペーンと Scavenger モードの切り替えを通じてさまざまな進行レベルを体験することでさらなる価値を与えます。
 
Survios は何年もの間にたくさんの VR ゲームを開発されてきましたが、VR デベロッパーを目指す人たちに何かアドバイスはありますか?
 
Abedian 氏:まだ完全にわかっていることはありません。発見すべきことはまだたくさんあります。恐れることはありませんが、賢くなりましょう。仮説を検証し、失敗から学びます。コミュニティに目を向け、それぞれの人、グループ、スタジオがさまざまな方向でメディアにどのように取り組んでいるかを見てください。 
 
VR への挑戦はエキサイティングでもあり、失望もあります。私たちが突き進めたのは、終わりのない可能性と広く導入されていく必然性を感じずにはいられなかったからです。これらの技術が未来だと信じる人には、スマートフォンがこの数年で広まったように VR も人びとの生活に入り込んでいく方法がわかるでしょう。
 
貴重なお話をお聞かせくださりありがとうございました。The Walking Dead Onslaught についての詳細は、どこで確認できますか?
 
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