©Seaknot Studios, FREAKY DESIGN / SHUEISHA, SHUEISHA GAMES

『浮世/Ukiyo』が和風仮想現実から脱出するカジュアル ゲームになった理由

Brian Crecente |
2023年3月14日
シーノットスタジオは 2020 年に久井亨氏により設立されました。PlayLogic というアドベンチャー ゲーム用のツールキットを使ったインディーズ ゲームの開発を専門としています。
フリーキーデザインは 2013 年に設立されたデザイン スタジオです。主にソーシャル ゲーム向けのキャラクターや背景のデザイン、そして、飲食ブランド向けのトータル ブランディング デザインも手掛けています。手掛けたゲームとしては、スペースデブリーズリヴリーアイランドポケコロなどがあります。
和風サイバーパンクの仮想世界に閉じ込められたカイは、現実世界に戻る方法を突き止めるために、お気に入りのゲームである『浮世/Ukiyo』の中をさまよう羽目になってしまいました。

このゲーム内の架空のゲームである『浮世/Ukiyo』と同じタイトルを持つ、今年リリースされるこのストーリーベースのアドベンチャー ゲームは、所沢を本拠地とするデベロッパーであるシーノットスタジオによる初のゲームで、フリーキーデザインというデザイン会社との共同作業の産物です。

私たちはシーノットおよびフリーキーデザインの創業者に取材して、両社がこの魅力的なビジュアルのゲームをどのように開発したのか、スタイルの確立を目指す新スタジオにとっての Unreal Engine の価値、そして、Epic の MegaGrant 授与作品である『浮世/Ukiyo』のルック & フィールに渋谷のポップカルチャーがどのような影響を与えているのかを伺いました。
 

これはシーノットスタジオによって開発された初のインハウス ゲームなんですね。スタジオの創業の経緯と目標を教えてください。

久井亨氏 (シーノットスタジオ合同会社の創業者):
私はドイツにある Nintendo of Europe (NOE) で働いていたときに、ゲームの開発を始めました。当時の私は、ヨーロッパのサードパーティのゲーム デベロッパー向けのテクニカル サポートを担当するエンジニアとして働いていました。そしていろんなデベロッパーのお手伝いをしていました。その経験から、自分でもゲームの開発を始めたくなったのです。

NOE を辞めて日本に戻ってから、独立して独自のゲームを制作するためにシーノットスタジオを創業しました。私は、日本にはまだまだ隠れた才能がたくさん潜んでいると信じているので、将来は多くのクリエイターさんたちがオリジナルのストーリーとキャラクターでゲームを制作するお手伝いができればいいなと思っています。

シーノットスタジオとフリーキーデザインが共同でゲームを制作しようと決意した経緯はどのようなものでしたか?

久井氏:
UE4 をベースにしたアドベンチャー ゲームの基本システムが完成したときに、フリーキーデザインで働いている友達に協力の話を持ち掛けました。そのときは、こんな大プロジェクトになるとは思いませんでしたけどね。でも今では、フリーキーデザインのアーティストさんたちがたくさん、このプロジェクトに参加してくれています。

『浮世/Ukiyo』の背後にある発想の元と、このゲームで実現したい目標を教えてください。

久井氏:
フリーキーデザインがこのゲームのコンセプト アートを見せてくれたとき、私は興奮してこのゲームは成功すると確信しました。私はこのゲームを、インディーズ ゲーム業界の中でもきわめてユニークなゲームにしたいと思っています。

高田春樹氏 (フリーキーデザイン株式会社の創業者):私たちは『浮世/Ukiyo』の世界を、日本のゲーマーばかりでなく、世界中に広めたいと思っています。

『浮世/Ukiyo』の開発に Unreal Engine を使うことを決めた理由は?

久井氏:
私はテクニカル サポート担当のエンジニアとして、いろんな種類のゲーム エンジンやミドルウェアを扱ってきました。Unreal Engine は登場してから時間がたち、既に相当なユーザー数になっていますが、今でも活発に開発が進んでいてたくさんのプラットフォームをサポートしています。そして、私のような技術オタクにとっては、ソースコードが利用できることもとても重要でした。

シーノットとフリーキーデザインでは、片方がモンスターハンターのようなゲームに熱中しているのに対し、もう片方は UndertaleMOTHER のようなゲームの方に熱中しているという具合に、ゲームの好みがいかに違うかという話を拝見して驚きました。そのようにゲームの好みが違うもの同士が、どうやって共通の基盤を見出すことができたのでしょうか?

久井氏:
実は、フリーキーデザインの皆さんは、ライフ イズ ストレンジとかザ・ラスト・オブ・アスのような物語ベースのアドベンチャー ゲームも好きなんですよね。ですから、ゲームのジャンルはさほど大きな問題だとは思いませんでした。

高田氏:改めて共通の基盤を求めるというよりも、お互いのゲームの楽しみ方の違いを尊重した結果として、いい関係になれたんだと思いますよ。
©Seaknot Studios, FREAKY DESIGN / SHUEISHA, SHUEISHA GAMES
『浮世/Ukiyo』は当初、限られた予算で手の空いた時間にデザインされていたらしいですね。それを可能にする上で Unreal Engine はどう役立ちましたか?また、そのような制限はゲームの見た目や規模にどう影響しましたか?

久井氏:
Unreal Engine 利用の初期コストはきわめて低いし、マーケットプレイスのアセットの多くも無料もしくは格安です。これはゲーム開発の最初期にはとてもありがたかったです。あと、UE4 や UE5 は Linux でも利用できるし、そちらも無料です。

Unreal Engine の利用はこのような大幅なビジュアルの変更にどう役立ちましたか?またその変更はゲームのデザインにどう影響しましたか?

久井氏:
このゲーム自体は 3D で動作しているのですが、2D のように見せるために、2D の背景画像の隣に透明なコリジョンモデルを配置しました。このコリジョンモデルは BSP (バイナリ空間分割) を使って作成したもので、簡単でありながら融通が利きます。ですから、ビジュアルの変更にも比較的簡単に対応できました。

お二人が渋谷で過ごした時間は、『浮世/Ukiyo』のルック & フィールにどう影響しましたか?

高田氏:
渋谷は私たちの第二の故郷です。フリーキーデザインはいつもは鎌倉で仕事をしていますが、鎌倉は海と山に囲まれた日本の古都です。一方渋谷は、私たちが学生時代に濃密な時間を過ごした場所です。それはもう大昔のことで、2000 年代前半でした。このゲームには、当時の古い渋谷のイメージが投影されています。当時の渋谷は、今ほどオシャレではなくて、古い日本的な渋谷のイメージとサイバー都市のイメージが混ざり合っていました。

お二人が実現しようとしたデザインの方法論は、2018 年にリリースされた State of Mind に大きな影響を受けていると思います。このゲームの世界観が『浮世/Ukiyo』にどのような影響を与えたかを説明していただけますか?そして影響を受けた理由も。

久井氏:
私は State of Mind の未来的なテーマとローポリ 3D のビジュアルのスタイルがとても好きでした。でも、State of Mind の規模やゲーム メカニクスも大きなヒントになりました。State of Mind には激しいアクションは必要ないので、アクション ゲームの得意でない人でもストーリーを楽しむことができます。(私自身もアクション ゲームはあまり得意ではありません。) State of Mind の平均プレイ時間は約 10 時間で、私自身のカジュアルなゲーミング スタイルに合っています。だからこそ私は、このようなゲームをもっとプレイしたいと思い、自分で作ることまで考えるようになったのです。
©Seaknot Studios, FREAKY DESIGN / SHUEISHA, SHUEISHA GAMES
『浮世/Ukiyo』のデモは、BitSummit でも集英社ゲームクリエイターズ CAMP でも賞を獲りましたね。この受賞はお二人の仕事にどう影響しましたか?

久井氏:
正直言うと、まだ完成してもいないゲームがそれほど注目されたのは予想外でした。ですから、私はその受賞に驚くばかりでした。そして今や、このゲームの開発が私の主な仕事になっています。

高田氏:私は、受賞に勇気づけられたし、自信にもなりました。受賞後の集英社からの支援は、とても安心感を与えてくれました。集英社は業界内でも最も優秀な会社の 1 つで、私たちにないものを補ってくれました。また、受賞はフリーキーデザインの芸術的な創造性に自信を与えてくれて、「この世界ちょっとイケてるよね?」と思わせてくれました。

『浮世/Ukiyo』はその後 Epic MegaGrant の対象にもなりましたね。MegaGrant の提供がシーノットスタジオに与えた影響は?

久井氏:
提供していただいた資金で、日本の有名なゲーム デベロッパー数社と共同開発を行っています。彼らからは既に多くのことを学びました。一緒に開発すると刺激を受けますし楽しいです。

プレイヤーがリラックスできるゲームとして気楽にプレイしてくれることを望んでいる、という久井さんの発言を読みました。どうしてそう思うのでしょうか?

久井氏:
それは単に、私自身が本格的なゲーマーではないからです。ハイエンドのゲーム機に大金を払ったりもしませんし、ゲーム操作に集中するのも下手です。私みたいな人はたくさんいると思うし、隠れた市場を発掘できるかもしれません。あと、このゲームは誰でも手の届くものにしたいとも思っています。
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『浮世/Ukiyo』のリリース時には何を期待していますか?

久井氏:
このゲームが多くのクリエイターやゲーム デベロッパーを刺激して、独自のゲームを開発するきっかけになることを願っています。

高田氏:プレイヤーの皆さんが私たちの創造した世界をもっと観たいと思って、私たちのゲームをもっとプレイしたがることを願っています。

『浮世/Ukiyo』の開発について、何か他に言っておきたいことはありますか?

久井氏:
開発はまだ途中ですが、パブリッシャーの集英社ゲームズのおかげで、最初のデモ版よりもはるかに印象的なゲームになったのは間違いありません。

高田氏:ゲームのデザイン、アート、シナリオ、そしてサウンドです。そのすべてが、バランスをとるのが難しいぐらい高い水準で融合していますが、それこそが私のやろうとしたことです。

質問の回答に時間を割いていただいてありがとうございました。『浮世/Ukiyo』やシーノットスタジオやフリーキーデザインについて、もっと詳しく知りたい読者は何を見ればよいでしょうか?

久井氏:
ソーシャルメディアで『浮世/Ukiyo』フリーキーデザインシーノットスタジオをフォローしてください。

高田氏:もうすぐ『浮世/Ukiyo』のウェブサイトができるので、そこをチェックしてください。さらに詳しく知りたい方はソーシャルメディアをご覧ください。ありがとうございました。

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