リアルタイムの基礎知識

デジタル ヒューマンを作成するには?

コンピュータ グラフィックスの登場以来、人々はリアルなデジタル ヒューマンを作成しようとしてきました。最近までその作成には数か月、場合によっては数年もの時間を要していました。デジタル ヒューマンの作成には非常に費用と時間がかかり、高度な技術的知識と設備、そして優れた芸術的スキルが必要でした。しかし、MetaHuman Creator のリリースによってすべてが変わりました。このクラウドベースのアプリケーションを利用すると、完全にリギングされたフォトリアルなデジタル ヒューマンを誰でも数分で作成できます。

デジタル ヒューマンとは?

簡単に言えば、デジタル ヒューマンとは、コンピュータで生成された人間の 3D バージョンです。仮想世界でアニメートすることで、実在の人物のように動き、振る舞うことができます。デジタル ヒューマンは様式化したものから写実的なものまでさまざまです。インタラクティブな体験の場合はリアルタイムで、アニメーションの場合はオフラインでレンダリングできます。デジタル ヒューマンの動きは、人間または人工知能 (AI) によって制御可能です。丁寧に作り込むことで、デジタル ヒューマンは現実とほとんど見分けがつかなくなります

デジタル ヒューマンをフォトリアルにするには、肌の下にある血流をシミュレートするスキンのテクスチャのレイヤー、頭の動きに対して自然に動く髪、人間らしい動きのバリエーションなど、多くのさりげない要素が必要になります。たとえば、ほとんどの人間の顔は完全に左右対称ではありません。肌の色素に関しても、鼻の先がわずかに赤くなったり、そばかすがわずかに散らばっていたりするなど、ちょっとした違いがあります。
 

なぜデジタルヒューマンが必要なのか?

デジタル ヒューマンを使用する目的について、気になる方がいるかもしれません。実際のところ、デジタル ヒューマンが Senua's Saga: Hellblade II といったゲーム、Netflix の Love, Death + Robots やマーベルの スパイダーマン、TreeHouse Digital の短編ホラーである The Well などの映画で、あるいはソーシャル メディアのデジタル インフルエンサーとして登場しているのを見たことがある方もいると思います。
Courtesy of Treehouse Digital LTD
デジタル ヒューマンは、メディアやエンターテインメント以外ではヘルスケア業界でも大きな可能性を秘めています。この分野では、デジタル ヒューマンをデジタル コンサルタントとして利用したり、外科医のトレーニングで使用したりできます。また、考古学でも最近、MetaHuman の技術を使用して 1 万歳のシャーマンを生き返らせたりしています
AI と組み合わせると、デジタル ヒューマンの可能性はさらに広がります。カウンセリングからリスク評価まで、あらゆるシナリオで使用できます。建物のデジタル ツイン内でデジタル ヒューマンを動かすことで、実際の人間を危険や不便にさらすことなく避難経路や歩行者の流れをテストできます。実際に建物が建設される前にこれを行うことさえ可能です。また、将来、AI 駆動型のデジタル ヒューマンを家に閉じこもっている高齢者のパートナーにすることも考えられます。

メタバースの時代になると、仮想ワールドでの生活にますます多くの時間を費やすことになりますが、こうした状況ではあらゆる場所でデジタル ヒューマンを見かけることになるでしょう。仮想ワールドでまだ自分のアバターを持っていない場合は、デジタル ヒューマンをアバターとして使用することで、なりたい自分になることができます。

デジタル パーソナル ショッパーによるオンラインでのリテール体験といったように、デジタル ヒューマンは間違いなく多くの人々の未来の一部を担うようになるでしょう。

MetaHuman Creator の使用を開始する

MetaHuman は実際にどのように作成すればよいのでしょうか?また、作成は難しいのでしょうか?信じられないほど簡単です。MetaHuman Creator の早期アクセス プログラムにサインアップするだけで、このクラウドベースのアプリケーションにアクセスできるようになります。ハイスペックなコンピュータは必要ありません。Windows か macOS が搭載されたデスクトップまたはノート パソコンに Web ブラウザがインストールされていれば十分です。

このアプリを起動すると、実際の人間からスキャンされたデータを組み合わせて作成された、数十種類のデジタル ヒューマンのプリセットのデータベースが表示されます。これらのプリセットから作成作業を開始できます。複数のプリセット間で顔のさまざまな領域をブレンドできます。また、ヒューマンを直接スカルプトして顔の形を変えることもできます。このアプリには、顔が現実にはありえない形に誤ってゆがまないようにするための設計が施されています。
MetaHuman Creator では、髪型と色の選択、あごひげ、眉毛、口ひげなどの調整、目と肌の色の変更、そばかすやしわの追加、歯の変更だけでなく、化粧を施すことも可能です。体型や服を選択して、MetaHuman をドレスアップしましょう。服はさまざまな色やグラフィックでカスタマイズできます。

いつでも、さまざまなアニメーションを再生したり、さまざまなポーズを選択して MetaHuman が実際にどのように見えるかを確認したりできます。

Unreal Engine で MetaHuman を操作する

MetaHuman を作成したら、UE5 (Unreal Engine 5) に完全に統合された Quixel Bridge を介して Unreal Engine プロジェクトに直接ダウンロードできます。Unreal Engine はゲーム開発、建築や自動車ビジュアライゼーション、映画とテレビのリニアコンテンツ制作、放送とライブ イベントのプロダクション、トレーニングとシミュレーションやその他のリアルタイム アプリケーションの制作を可能にする完全な開発ツール スイートです。
Unreal Engine は無料でダウンロードして使用を開始できます。MetaHuman は、体と顔の両方に完全にリグが備わった状態で Unreal Engine に組み込まれるため、デジタル ヒューマンの作成で最も時間のかかる作業の一つを省くことができます。リグの使用方法については、「Animating MetaHumans with Control Rig in Unreal Engine (Unreal Engine でのコントロールリグを使用した MetaHuman アニメーションの作成)」および「Using the MetaHuman Facial Rig in Unreal Engine (Unreal Engine での MetaHuman フェイシャル リグの使用)」のビデオ チュートリアルをご覧ください。また、MetaHuman のサンプル プロジェクトをダウンロードして開くと、アニメートされたサンプルを確認することもできます。

すべての MetaHuman は同じリグを共有していることから、体のプロポーションが異なっていたとしても IK リターゲッタを使ってキャラクターから別のキャラクターにアニメーションを簡単に転送できます。Unreal Engine マーケットプレイスには、すぐに使用可能な何千ものアニメーションが用意されており、その多くは無料です。

MetaHuman は UE5 の物理エンジンである Chaos とも互換性があり、アクティブなラグドール物理を搭載しています。リアルなポーズの再現を目指しており、落下した場合には頭を守る動作を取るなどします。MetaHuman サンプル プロジェクトには、物理アセットと「起き上がる」アニメーションの使用方法を説明するレベルがあります。
 
MetaHuman には 8 つの LOD (詳細レベル) が含まれているため、Android から XSX、PS5 まで、あらゆるデバイスでリアルタイムでの実行が可能です。MetaHuman を完全に忠実に再現し、ストランドベースの髪とリアルタイム レイ トレーシングを有効にするには、RTX グラフィック カードを搭載したハイエンド PC が必要です。コンピュータでリアルタイムでの動作がなかなかうまくいかない場合は、「MetaHuman Performance and Scalability Settings (MetaHuman のパフォーマンスとスケーラビリティの設定)」ビデオ チュートリアルをご覧ください。

モーション キャプチャを使用してリアルにアニメートされたデジタル ヒューマンを作成する

デジタル ヒューマンはキーフレームごとに手動でアニメートできます。また、モーション キャプチャ技術は、単独またはキーフレームと組み合わせて使用するのが一般的です。このプロセスでは、俳優が動くとその動作が俳優に取り付けられているセンサーや周囲のカメラによって記録され、その後にデジタル キャラクターに転送されます。

Unreal Engine で Live Link を使用すると、このプロセスをリアルタイムで行えるため、俳優は動作を行いながら自分のデジタル版が動くのを見ることができます。これにより、その場で調整を行い、可能な限り最高のパフォーマンスを実現できます。この手法は、Unreal Engine の無料サンプル プロジェクトである Slay の制作の際に大きな効果を発揮しました。
フェイシャル アニメーションはリアルに見せるうえで特に重要な要素であり、ストーリーを伝えるカギとなります。ボディの動きに加えて、表情や指の動きを記録するモーション キャプチャをパフォーマンス キャプチャと呼びます。フェイシャル パフォーマンス キャプチャ用のソリューションは多数ありますが、無料の Unreal Engine 向け Live Link Face iOS アプリを使用する方法がおそらく最も簡単です。

スキャンまたはスカルプトから独自のデジタル ヒューマンを作成する

MetaHuman Creator では非常に多様なキャラクターを作成できますが、現在のスキャン データベースのサイズでは、実際の姿をターゲットにすることはできません。ただし、Unreal Engine 用の MetaHuman プラグインの機能の一つである Mesh to MetaHuman を使用すると、スキャン、スカルプティング、または従来のモデリング ツールで作成した独自のカスタム メッシュを取得して、完全にリギングされた、すぐにアニメート可能な MetaHuman に変換できます。
MetaHuman Creator で完全にカスタム化された MetaHuman をさらに改良し、アニメーションを再生することで、即座に命を吹き込むこともできます。自分のゲームで自分自身が演じることも可能です。 詳細については、「Using Mesh to MetaHuman in Unreal Engine (Unreal Engine で Mesh to MetaHuman を使用する)」ビデオ チュートリアルをご覧ください。

Mesh to MetaHuman と MetaHuman Creator はどちらも MetaHuman フレームワークの一部です。このフレームワークは、あらゆるクリエイターが非常にリアルなヒューマン キャラクターをあらゆる方法で使用できるようにすることを目的として進化し続けています。ニュースレターにサインアップすると、最新のニュースと開発の最新情報を入手できます。
Unreal Engine で MetaHuman Creator と Mesh to MetaHuman を使ってデジタル ヒューマンを作成する方法をご理解いただき、楽しんでいただけたら幸いです。

独自のデジタル ヒューマンを作成する準備はできましたか?

早期アクセス プログラムにサインアップする方法、ドキュメント、チュートリアルにアクセスする方法の詳細については、MetaHuman の製品ページを確認してください。MetaHuman フレームワークについてまだ不明な点がある場合は、総合 FAQ のページ をご覧ください。

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