Image courtesy of FOX Sports

FOX Sports が革新的なマルチカム バーチャル プロダクション スタジオを用意して NFL シーズンの幕開けを迎える

2022年10月10日
お気に入りの飲み物を冷やしておき、ピザを注文し、友人たちを招きましょう。何か月も待ちわびたのちに、ようやくテレビをつけるときがきました。NFL の新しいシーズンが開幕し、数百万のアメリカ人が FOX NFL Sunday を視聴します。試合の前に FOX Sports で放送されるこの番組は、過去 30 年ほどにわたり試合の日に欠かせないものであり続けています。番組は、試合のプレビュー、分析、パネル ディスカッションで構成され、エミー賞を 4 度獲得しています。

今年はこのすばらしい番組の舞台裏で変化が生じています。今年の FOX NFL Sunday は、Unreal Engine を活用した新しい LED バーチャル プロダクション施設で制作されています。革新的なマルチカム機能が特徴のこの施設は、6 か月以上、労働時間にして延べ 3 万時間以上をかけて作られました。
 

新時代の幕開け

FOX Sports でエグゼクティブ バイス プレジデント兼クリエイティブ ディレクターを務める Gary Hartley 氏にとっては、この新しい施設への移行は、ストーリーテリングとユニークなビジュアルを組み合わせるという FOX 持ち前の性質を示す一例に過ぎません。Hartley 氏は次のように述べています。「スポーツ部門ができたばかりのころ、David Hill という人が責任者を務めていました。Hill のアプローチは革新的なものでした。彼は常に問いかけていました。たとえば、どうしてスコアがわからないのかと問いかけ、放送のグラフィックスで画面にスコアを追加しました。当時の私たちのミッション ステートメントは、『同じ試合、新しい姿勢』でした。FOX Sports では、30 年ほど経ってもその気風が引き継がれています。ただ試合を見せるだけではなく、スポーツ放送の限界を押し広げています」

その気風が発揮されたのは 2019 年のことでした。放送業界向けの展示会 NAB Show で Unreal Engine のデモンストレーションを見た FOX Sports は、ゲーム グラフィックスの導入を大規模に進めた先駆的な放送事業者の 1 つとなりました。その結果でき上がったのが、ノースカロライナ州シャーロットに作られた NASCAR の仮想的なセットでした。これはリアルタイム テクノロジーを試す絶好の機会となりました。唯一問題となったのは、このスタジオでは LED ではなくグリーン スクリーンが使われていたことでした。グリーン スピルが発生し、出演者はセットでビジュアルを見たり、ビジュアルとインタラクションしたりすることはできませんでした。

FOX Sports でグラフィックス テクノロジーおよびインテグレーション担当シニア バイス プレジデントを務める Zac Fields 氏は次のように述べています。「それからまもなく、LED と XR が話題になっていることに気が付きました。映画やシリーズ物の番組で LED が使われていることはわかりましたが、生放送ではまだ誰も試していないようでした。初期のデモをいくつか見て、この新しいテクノロジーを試す必要があるとわかりました。LED を使うことで、出演者をどのような環境にでも簡単に連れていくことができ、セットでフォトリアルなライティングのエフェクトを適用できました。グリーン スクリーンでのキーイングや、選手のグラフィックスなどの複雑な要素のプリレンダリングについて心配する必要はありませんでした」

 

マルチカム プロダクション

FOX Sports の新しいバーチャル プロダクション スタジオは、ロサンゼルスにある FOX の敷地に建てられました。2 階建てで、5,130 平方フィート (約 476 平方メートル) の LED ウォールと床面のパネルを備えています。25 台のマシンで Unreal Engine を利用してクラスタでレンダリングを行い、ビジュアルを 4K で表示できます。セットには AR 対応のカメラが 7 台あり、そのうち 4 台は LED ボリューム内で AR/XR をリアルタイムに処理できます。トラッキング、AR の合成、カラー マッチングはすべて StypeLand で処理します。また、セットでのスタジオ コントロールには Erizos を使います。LED ボリューム外の LED スクリーンでは 11 の Vizrt エンジンを利用します。
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このプロジェクトのリード テクニカル アーティスト、Alex Seflinger 氏は次のように述べています。「新しいスタジオの LED ウォールは、床面を除いても 1 万ピクセルあります。巨大なものであり、4K で出力できます。それだけでも複雑なセットアップですが、さらに多くのことを望み、ボリュームでマルチカムを利用できるようにしたいと考えました」
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ただし、LED ボリュームでのマルチカム機能の構築は、生放送ではそれまで試みられていませんでした。「それまでの LED では、普通は LED ウォールに表示される前にディレクターがリアルタイムのプレビューを見ることはできませんでした」と Seflinger 氏は述べています。仮想的なステージの挙動を放送のようなものにするために、プレビューと制御が可能な複数のカメラのフィードを作成する必要がありました。また、生放送中にディレクターがさまざまなカメラからの映像を切り替えて利用できるように、LED ウォールのどの角度からの映像も見た目がよくなっている必要がありました。
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そのために、MegaPixel が提供する新しいテクノロジー、GhostFrame を利用しました。このテクノロジーでは、リフレッシュ レートが 240 Hz の 1 つの LED ウォールに対して 60 Hz のビデオ ストリーム 4 つを組み合わせることができます。エンジニアリング チームが各フレームを設定したら、ディレクターは、リアルタイムに表示され見え方がそれぞれ異なる 4 つのカメラ フィードを確認できます。

Fields 氏は次のように述べています。「バーチャル プロダクションでのマルチカムの利用について最初に考えたときは無理かと思いましたが、幸いなことに GhostFrame テクノロジーを利用することができました。このテクノロジーは生放送を可能にする鍵となりました」
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よりダイナミックなセット

GhostFrame が動作するようになったら、次のステップは、拡張現実 (AR) の要素を各ショットに重ねて表示できるようにするために、セットを拡張可能にすることでした。FOX Sports のシステム エンジニアリング担当バイス プレジデント、Daryl Moore 氏は次のように述べています。「LED ウォールを実行するための 16 台のマシンでの Unreal Engine に加えて、合成を担当する 7 台のマシンの Unreal Engine で AR エレメントを各シーンの天井に重ねました。また、別の 2 台をモニターに利用し、視差効果を与える別々のシーンを表示できるようにしました」
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遅延を最小限に抑え、大規模なセットアップに複数存在する障害点の影響を緩和するために、FOX Sports のチームは Unreal Engine を実行する各マシンが同じになるように、部品とグラフィックス カードを統一しました。違うのは各エンジンがフィードするボリュームの部分だけで、それは担当箇所が AR の要素になるか LED ウォールまたは床面になるかによって異なりました。

Moore 氏は次のように述べています。「Unreal Engine の重要な特徴の 1 つは、極めて安定していることです。床から天井、そして出演者の上にまで仮想的なグラフィックスだらけの、階層化されたリッチなシーンを構築できました。これによって、Unreal Engine は生放送向けにすべてを問題なくレンダリングしてくれると信頼しながら、より優れた、よりダイナミックなストーリーを伝えることができました」

スポーツ放送の未来の変革

Seflinger 氏によると、FOX の新しいバーチャル プロダクション スタジオの作成はリスクを伴う取り組みでしたが、大きな見返りを得ることができました。「スポーツに関する番組、特に FOX NFL Sunday のようなものにはさまざまな要素が関わっており、すべてに厳しい時間の制限があり、すべてが組織的なものになっています。30 年ほど続いている番組に、これまでどの番組でも使われていない新しい仮想的な要素を取り入れようとしました」
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番組の放送が始まってから 1 か月も経たないうちに、このステージは大きな成功を収めました。FOX Sports のチームでは、野球やバスケットボールなど、ほかのスポーツのためにもこの施設を利用する予定を立てています。また、よりインタラクティブ性の高い AR についても実験を行う予定です。Fields 氏は次のように述べています。「私たちは、自分たちがストーリーテラーであると考えています。Unreal Engine は、ストーリーをまったく新しい形で伝えるためのツールを与えてくれます。5 年前、NASCAR のためのステージを作ったときに、リアルタイム テクノロジーの可能性を目にしました。そして現在、新しい LED ボリュームによって、ほとんど何でもできるようになりました」
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