Image courtesy of AV Simulation

多目的走行シミュレーション環境を Unreal Engine で強化

Sébastien Lozé |
2021年5月24日
自動車業界が従来の自動車から先進運転支援システム (ADAS) や自動運転車へと急速に移行していることに伴い、ドライビング シミュレーション業界も同じペースで変化することを迫られています。こうした車両のテストは大きな課題であり、詳細な環境、膨大なデータ セット、センサー、その他の数々の要素をまとめて有用な結果を生み出す必要があります。

自動車業界では、数十年にわたり、ドライバーが物理的なシミュレーターの中に座る Driver-in-the-Loop (DIL) ドライビング シミュレーターが主に使われてきました。各メーカーは、こうしたシミュレーターを頼りに、ドライバー、車両、道路のインタラクションの改善に取り組んできました。最近では、自動運転車や運転支援システム搭載車に専用の仮想シミュレーターが求められるようになってきています。数千マイルにわたる実際の道路の走行を、数十億マイルに及ぶさまざまな道路状況のデジタル マイルに置き換えるためです。

パリを拠点とする AVSimulation は、こうした課題を解決するために、シミュレーター会社 Oktal Sydac、自動車メーカー Renault Group、CAD ソフトウェア開発会社 Dassault Systèmes が立ち上げたジョイント ベンチャーです。ドライビング シミュレーターや支援システムを含む、包括的な車両テスト用ツールを提供しています。多目的シミュレーション ソフトウェア SCANeR に加え、現在は Renault と BMW を顧客に、世界最大級の物理ドライビング シミュレーターの開発に取り組んでいます。
 

AVSimulation の CEO を務める Emmanuel Chevrier 氏は、次のように述べています。「当社が提供するツールは、ますます高度化する車両のテストや検証に必要な膨大な量のデータに対応できるよう進化しています。当社のビジョンは、お客様が求めるあらゆるツールやサービスを提供し、お客様が安全性や自動化の競争で有利となるよう後押しすることです」

このようなニーズに応えるため、AVSimulation は最近、SCANeR の 3D エンジンを Unreal Engine に切り替えました。その結果、SCANeR のモジュール性という元々の特徴を生かしながら、幅広いアプリケーションからデータを取り込める強力なソリューションが完成しました。このソフトウェアは、リアルなビジュアル、アセットのインポートやアクセスが容易なワークフロー、わかりやすい GIS のインポートなど、その他の機能も豊富です。
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SCANeR studio:第二次革命 

SCANeR studio は、AVSimulation が提供するソリューションの中核にある製品スイートであり、Software-in-the-Loop (SIL) シミュレーター、Hardware-in-the-Loop (HIL) シミュレーターの使用を含め、車両テストのあらゆるフェーズを対象に一般化されたプラットフォームです。

SCANeR は、Renault でシミュレーションとバーチャル リアリティのエキスパート リーダーを務める Andras Kemeny 教授によって開発されました。AVSimulation の CTO である Guillaume Millet 氏がこの製品を 10 年以上前に大きく作り変えました。そしてこのたび、エンジニア チームが Unreal Engine を使い、構築し直すことになりました。この再構築は、自動車メーカーがシミュレーションに求める複雑性、リアリティ、規模が高まったため、その対応として必要になりました。また、個々の顧客が提示する多数の異なる組み込みシステム、ソフトウェア プラットフォーム、カスタム システムとのインターフェイスも必要になりました。

「ヘッドライトやビークル ダイナミクスなど、現在使用中のシミュレーション モジュールと連携させることも、SCANeR ソリューションをそのまま使用することもできます。IT や工業用なども含め、あらゆる製品とのインターフェイスを実現したいと考えています」と Chevrier 氏は言います。
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自動運転車を完全にテストするには各種の「in-the-loop」テクノロジーが必要ですが、Chevrier 氏によると、AVSimulation の顧客には DIL、SIL、HIL の各フェーズに同じソフトウェアを使用したいという要望があるそうです。また、このソフトウェアは Vehicle-in-the-Loop (VIL) フェーズにも対応できます。このフェーズは通常は仮想現実シミュレーションを通じて行うものです。

「SCANeR の特徴は、あらゆるフェーズを通じて使用できることです」と Chevrier 氏は述べています。

SCANeR は、UI の複雑さにも複数のレベルが用意されていて、プラグ アンド プレイ ソリューションを求める顧客にも、プログラミングなど Unreal Engine の技術的側面を深く掘り下げたい顧客にも対応できるようになっています。

AVSimulation の自動車業界担当ディレクターである Thomas Nguyen That 氏は次のように述べています。「SCANeR の標準的ユーザーが求めているのは、優れたレンダリングや画質です。それと同時に、レンダリングをカスタマイズしたい上級ユーザーもいます。こうしたユーザーには Unreal Editor へのアクセスも提供する必要があります」
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AVSimulation は、システムを Unreal Engine に移行することで、システムのモジュール性と拡張性を高め、特定の役割やシミュレーション手法に応じて異なるソリューションを提供できるようになりました。ユーザーは、ビークル ダイナミクスやヘッドライトなど個別のモジュールを取り除き、別のベンダーのモジュールに置き換えることができます。AVSimulation では、次世代 SCANeR の紹介として、SCANeR と Unreal Engine を合わせてセットアップする方法を紹介する動画を公開しています。

Unreal Engine が実現するリアリティ

リアリティ追求の一環として、SCANeR には仮想世界を構築するためのツールが含まれ、シミュレーション環境に必要なものすべてが用意されています。たとえば、道路、風景、ビークル ダイナミクス、交通、センサー、ヘッドライト、気象条件、実際または仮想のドライバーからのデータ、そしてシナリオのスクリプトなどです。
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必要な水準までリアリティを高めるためには、人間の目に必要な水準よりも桁違いに精度が高く、説得力があるカメラ データを SCANeR で生成する必要があります。人間の目なら数本の縦線だけで「雨」と認識できるかもしれませんが、コンピューターは人間のような判断能力を備えていないため、フォトリアルな雨でないと理解できません。

「テクノロジーを変えた主な理由のひとつに、フォトリアリズムの追求がありました。Unreal Engine により、レイ トレーシングなどの最新技術を利用し、物理学に基づくレンダリング シミュレーションを行い、センサーや人に高精度の入力データを提供できます」と Millet 氏は述べています。
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また、SCANeR を Unreal Engine プラットフォームに移行する別のメリットとして、顧客がインポート ツールのスイートである Datasmith を利用できる点があります。「Datasmith は非常に便利で、特に実行時にユーザーが使用しているのとほとんど同じワークフローをシミュレーションで実現できます」と Millet 氏は述べています。

最後に、Unreal Engine マーケットプレイスに用意されている再利用可能なアセットを使用すれば、顧客が 3D 環境を迅速に構築できることもチームが気に入った点でした。Chevrier 氏は次のように述べています。「このエコシステムがもう 1 つの要因でした。Unreal を選択するうえで費用対効果が魅力的な側面だったのは間違いありません」
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ほかのテクノロジーとの連携

拡張性に関しては、AVSimulation では、レール式の大規模シミュレーターのバックボーンとして SCANeR を使用しています。このシミュレーターは、道路自体が構築される前にユーザーが道路インフラを体験できるものです。このシステムの顧客には Renault や韓国の KEX が含まれます。

また、BMW 向けにもレール式大規模シミュレーターを 2 台開発しました。1 台は都市部の環境用、もう 1 台は回避行動、急制動、急加速のシミュレーション用です。後者が必要なのは、Chevrier 氏によると「ドイツの一部の高速道路には制限速度がないため」です。
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このようなシミュレーターを開発するのは非常に大変なことです。Chevrier 氏は次のように述べています。「このシミュレーターを開発するために、カーボン技術から高速鉄道技術まで、あらゆるニッチ プレーヤーを見つけ出し、あまり知られていない技術を集める必要がありました。多くの電子機器や組み込みソフトウェアも必要です。結局のところ、これは巨大なロボットだからです」

Unreal Engine が SCANeR にもたらす柔軟性により、チームはこれらのプロジェクトにも SCANeR を使用し、多くの技術を融合させて 1 つの完全なシステムを完成させることができました。

Chevrier 氏は、SCANeR を Unreal Engine プラットフォームに移行するという AVSimulation の判断には、エンジンそのものだけでなく、会社としての Epic Games の影響が大きかったことを認めています。「パートナーに求めることのひとつに責任感があります。Epic Games はゲーム会社ですが、長期にわたり積極的にこの分野に注力してきたことがわかりました」

「これは競争です。企業が自動運転車を最初に市場に投入するには、適切なアセット、適切なソフトウェアを急いで見つける必要があります。Unreal Engine は、ドライビング シミュレーターや、数台のコンピューターで大規模なシミュレーションを実行する場合など、あらゆるシミュレーション ツールにとって競争上の強みとなります」
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