Image courtesy of Untold Studios

レンダー ファームは不要:Untold Studios がアニメーション短編をクラウドで作成

2022年6月28日
Untold Studios は2018年10月に設立されました。今ではロンドンとロサンゼルスで音楽、映画&テレビ、広告といった業界向けのクリエイティブ業務にあたる従業員を約 200 人雇用しています。オリジナルの番組の制作から、The Crown、フリトレーのスーパーボウルでの広告 Push It、アデルのアルバム 30 のビジュアル面などの目立ったプロジェクトでの世界トップレベルの VFX まで、さまざまなことに取り組んでいます。

プロダクション責任者の Carl Phillips 氏によると、このような印象的な成長の秘訣はシンプルなものです。それは、Untold Studios は未来のために作られた、ということです。Phillips 氏は次のように述べています。「当社は世界初の完全クラウドベースのスタジオでした。クラウド テクノロジーの導入の先駆者となり、Amazon Web Services と提携して完全クラウド セットアップでの作業に伴う課題を克服しました」

思い切った試みではありましたが、クラウド セットアップの導入に初めて取り組んだ価値はありました。これまでに英国アカデミー賞とエミー賞にノミネートされ、同社のパイプラインは大きな成功を収めています。DSG animation と共同で制作した最新作 Malanca では、Untold Studios はクラウド テクノロジーの限界をさらに追求することにしました。完全に仮想化されたマシンを使いながら、Unreal Engine を利用してリアルタイム アニメーションを作成しようとしました。
 

ユニークな民話の作品化

Dragos Stefan 氏が監督を務める Malanca は、古代の森の端にある村で壊れた家庭に暮らすティーンエイジャー、Doru の物語です。父親が何の手助けもしてくれないなか、Doru は森の獣たちにさらわれた母親を救い出そうとして、獣たちの恐ろしいリーダー Dima と向き合います。
そのストーリーとコンセプト アートは Untold Studios のチームをたちまち引き付けました。Phillips 氏は次のように述べています。「アニメーションのユニークなスタイルに魅了されました。考え方は日本のアニメのようでありながら、見た目や感覚はヨーロッパ風でした。Unreal Engine を試し始めるには最適なプロジェクトだと思いました。Unreal Engine をクラウドで使うことで、Dragos と彼のチームはブカレストにいても、どこにいる誰とでも、まるで同じ部屋にいるかのように作業を進められるとわかりました」
 
Image courtesy of Untold Studios
From concept...

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...to final.


唯一の問題は、当時 Untold Studios には Unreal Engine をクラウドで使うためのソリューションがなかったことでした。MegaGrant の支援を受けて、チームではカスタムの包括的なシステムの開発を開始しました。そのシステムでは、EC2 の基本的なクラウド インスタンスと、ストレージのコストを最適化するための自動データ管理ソリューションを利用しました。

Untold Studios のリアルタイム スーパーバイザー、Simon Legrand 氏は次のように述べています。「私たちのクラウド システムは初期段階だったので、当初は Maya でのモデリングとアニメーションの従来のワークフローを使い続けることにしました。それからパッチを記述して、すべてのリグとアニメーションを FBX にベイクするようにしました。また、Unreal Engine 内で Python スクリプトを記述し、アニメーションとカメラのすべてのデータをシーケンスへとインポートしてアップデートする処理をバッチで行うようにしました」

キャラクター、アニメーション、Niagara FX を含むアセットすべてをインポートしてから、セットのレイアウトすべてを完全に Unreal Engine 内で作成しました。それらを使って環境の設計からライティングまですべてを制御しました。こうすることで、大規模なレンダー ファームや高スペックのマシンを現場に置く必要なく、チームが完成品レベルの高解像度のレンダリングをその場で作成して変更できました。すべてがクラウドにあったため、負荷の高い処理はリモートで行われ、チーム全員が表立ってプロジェクトにアクセスできました。
 
Image courtesy of Untold Studios

クラウドでのリアルタイムのメリット

Malanca に関わった全員が、そのワークフローの最大のメリットは見たままのものを得られたことだと言うと思います」と Legrand 氏は述べています。Legrand 氏と Stefan 氏によると、アセット、ライティング、FX を完全に適用した状態でさまざまなカメラ レンズやアニメーションをリアルタイムでテストできたことが、チームにとって大きなメリットとなりました。
Image courtesy of Untold Studios
新しいパイプラインではすべてがかつてないほど高速になりました。アーティストはプレースホルダー オブジェクトを使った非常にラフなアニマティックから出発し、同じタイムラインで作業に取り組みながら徐々に最終的なレンダリングへと進んでいくことができました。Legrand 氏は次のように述べています。「最終的なアニメーションが完成したら、たいていバグや問題がある大規模なレンダー ファームを使う代わりに、クラウドのパイプラインでは、すべてをローカルで、無料のソフトウェア Unreal Engine を使ってレンダリングできました。大幅にコストを節約できたので、その分でアーティストやデベロッパーを追加したり Marketplace で購入したりすることができました」

Malanca の作業が終わるまでには、Unreal Engine から最終的な映像が直接出力されるようになりました。Nuke でのグレーディングとコンフォーミングを除けば、ポストプロダクションの作業はごくわずかで済みました。Untold Studios にとっては、それはクリエイティブの新しい時代の幕開けを意味していました。今では VFX からインディーの VTuber のプロジェクトまですべてで Unreal Engine が使われるようになっています。「将来的には独自のインディー ゲームの開発も検討しています」と Legrand 氏は述べています。
Image courtesy of Untold Studios
「リアルタイムのワークフローでは、最初はすべてを最適化して安定させるために先行投資での開発が必要になる可能性がありますが、それが済めば非常にスピーディに物事が進むようになります。物凄いスピードで大量の作業を行うことができるようになります。そのスピードのおかげで、一度だけでなく、タイムライン全体のあらゆるコンテキストで多くの実験を行うことができるようになります。こういったメリットがあることから、Unreal Engine は現在業界で支配的になっている従来型のパイプラインを凌駕するようになると考えています」

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