Image courtesy of Rochester Institute of Technology

ロチェスター工科大学、リアルタイム テクノロジーの多分野結束とスキル移転をカリキュラムに生かす

Rebecca Perry |
2020年10月5日

Shaun Foster 氏 (美術学修士) は、ロチェスター工科大学 (RIT) の 3D デジタル デザインで准教授を務めています。3D グラフィックスとインタラクティブな教育的デザインにおける同氏の経験は 15年以上に及びます。これまで受賞歴のある複数のプロジェクトに加わるとともに、複数の支援金を受け取り、トップ カンファレンスにおいては定期的に出版および講演を行っています。 

ロチェスター工科大学 (RIT) School of Design の准教授である Shaun Foster 氏は、学部課程の 3D デジタル デザインを統括しています。Foster 氏は、Epic MegaGrant の支援を受けて、2020年春学期に、新たなコースであるシネマトグラフィーとプレビジュアライゼーションを開講しました。さらには、edX プラットフォーム上において、教育者向けにダイナミックな 16週間の新コース Unreal Engine Foundations を開設しました。
 

オンラインで進む

2020年の最初の 2か月は、RIT にとって事は順調でした。しかし、数か月前、世界中の教育者による計画と同じように、Foster 氏の計画も新型コロナウイルスのパンデミックによって突如として立て直しを余儀なくされました。幸いにも RIT には、リモート学習に容易に移行できる要素をすでに備えていました。大学の IT 部門には、共有の Google ドライブとリモート テストを作成できる機能がすでに導入されていたということもあります。また Foster 氏は、同期会議とディスカッションのために Zoom と Google Meet をすでに使用していました。 

しかし、すべての学生が、Unreal Engine を実行できるコンピューターを持っているとは限りません。この問題に対処するために IT 部門は、学生が仮想マシンで利用できるようにするために、ログイン機能を速やかにセットアップしました。Foster 氏も教え方を調整し、非同期の学生のコンテンツ配信、ビデオの録画、スライドショーの生成を取り入れました。また、幼い子供の親として Foster 氏は、家庭生活とホーム オフィスでフルタイムで働くことのバランスをとるべく、調整が必要となりました。
画像協力: ロチェスター工科大学

テクノロジー主導の多分野結束

Foster 氏は、パンデミック以前も挑戦を好んでいました。特に、テクノロジー主導の多分野結束と彼が呼ぶものの中心にいる感覚を好んでいました。彼は、3D デザイン/映画/ゲーム制作のための新たなアプローチに大いに期待しています。この新たなアプローチは、Unreal Engine に入っているツールによって可能になったものです。さらに彼は、リアルタイム テクノロジーが多くの分野にまたがって、新たな領域で重複し、移転可能なスキルセットが生み出されていることにも注目しています。

チュートリアルを使って Foster 氏が支援しようとしている人たちは、最近まで主にエンターテインメントに焦点を当ててきた従来の Unreal Engine の領域の外にいる人々です。しかし、この区分けは変わりつつあります。Unreal Engine のツールが多くの業界にまたがって広く採用されるようになってきたためです。

Foster 氏は、アウトリーチ活動の一環として、医療イラストレーション/インテリア デザイン/インダストリアル デザイン界の研究者や学生、および、3D デジタル デザインの学生たちとコラボしています。その中で、Foster 氏は、グラフィック デザインと次世代のユーザー インターフェイスのデザインに重複する関心事項さえ発見しています。

スタジオから教室に

Foster 氏の多分野への関心は若くして芽生えたものです。芸術家に囲まれて育ち、母親は彫刻家/陶芸家であり、父親は芸術写真の教授です。だから当然 (彼は笑いながらそう述べてくれました)、金融チームで働き、資格をもつ株式仲買人になることに決めたのです。しかし、金融業界で 3年間働いた後、再び芸術に心惹かれることになりました。2003年に仕事を辞めて、学校に戻り、3D コンピューター アニメーションとインタラクティブ デザインの修士号を取りました。 

卒業後、ニューヨーク州中部の Oneida Indian Nation が所有するスタートアップ、Four Directions Productions に加わりました。同社は、コマーシャル/ビジュアル エフェクト/アニメーション映画 (Oneida 伝説に基づく『Racoon and Crawfish』) を制作していました。この映画は、数々の賞や映画祭への招待を受けています。Foster 氏は、次の 5年間を映画業界で働き、その後に RIT に加わり、3D デジタル デザインのカリキュラム立ち上げを支援しました。 

「このカリキュラムは私にとって魅力的でした。従来からある 3D アニメーションを制作するだけでなく、これら出現する可能性のある新テクノロジーを統合できるポテンシャルがあったからです」と彼は言います。

バーチャル プロダクション: シネマトグラフィー/ゲーム/VR をつなげる

Foster 氏は、Epic MegaGrant に応募しました。それによって、RIT でシネマトグラフィーとプレビジュアライゼーションという新たな講座を開発することができるようになりました。この講座は、Epic Games によって開拓された、バーチャル プロダクションにおける新たなワークフローのいくつかを結びつけます。複数の分野を結びつけるためには、課題がありました。それは、さまざまな分野で使用されている用語を翻訳することです。 
画像協力: ロチェスター工科大学
彼は学生と協力して、ゲーム/映画/VR/AR における似たような概念を結び付けることができる用語を作成してきました。新しいコースは現在、レベルの高い学生を対象にしていますが、Foster 氏は、新入生や 2年生にもそれらの概念をもっと早い段階で取り入れさせたいと考えています。Foster 氏自身、マイクロエレクトロニクス、ゲーム、バーチャルリアリティ、AR に幅広い関心をもっています。そのことは、教えることの原動力となり、それらすべてが出会う場所としての Unreal Engine をぜひ活用したいという情熱となって現れています。

「私は自分の好きな道を歩みながら、とても有意義な時間を過ごしています」と彼は言います。「チュートリアルを作成し、情報をまとめて、テクノロジーの最先端に加わるのが大好きなのです。」

Foster 氏の多方面に及ぶ情熱は、異分野間の教育アプローチにも影響を与えていて、彼が担当する 3D デジタル デザインの学生たちは、デジタル制作における新たな結合を築いています。バーチャル プロダクションの要素を映画やゲームの既存の表現様式と組み合わせているのです。
画像協力: ロチェスター工科大学

教育者向けに Unreal Engine のリソースを活用

Unreal Online Learning では、コンテンツのコレクションがますます増えています。そのため、教育者にとっても、一層貴重なリソースになっています。また、Foster 氏によると、動画のコレクションが数本から数百本に増えただけではありません。コースが進化するエコシステムに変わったのです。コースの作成者がインスパイアされ、お互いのアイデアから発展させることができるという循環が生じました。彼の教育哲学は、20-80 の法則に関係しています。ツールの 20% が 80% の時間使用されるというものです。 

Foster 氏は、ある分野の知識は、その語彙の中に膨大な量が保存されていると考えています。そのため、彼は互いにリンクされている用語のライブラリを作成しています。カリキュラムとチュートリアルを複数の分野で利用できるように設計しているのです。Foster 氏の考えでは、この種の相互作用によって、エンターテイメントに興味のある学生が他の業界からもチャンスを発見できるようになるということです。
画像協力: ロチェスター工科大学
技術が変化するスピードは、教育者にとって最大の問題の 1つです。Epic Games は、ほぼ 3か月ごとに新たなツールとコンテンツをリリースしています。このことは、Foster 氏にとってみれば、常に自分のリソースを更新しているということになります。 

「陳腐化の速度、言い換えると、知識の半減期が増加していると言ってもよいでしょう」と彼は言います。「これが最大の課題の 1つだと思っています。鍵になるのは、情報デザインによって、どのバージョンの Unreal において、どの部分でいつ変更があったのかを特定してタグを付けることができるかどうかにかかっています。」

また、Foster 氏は複数の分野から語彙を取り込んでいます。しかし、さまざまな分野の用語を統合させることは容易なことはありませんでした。デザイナーは「アフォーダンス」という言葉を使いますが、これはグラフィック デザインや 3D デジタル デザインでは伝統ある表現とは言えません。一方、ヒューマン コンピュータ インターフェイス (HCI) の設計では、両分野と重複する面があり、さらには、インタラクティブな VR の設計にも関係します。 

「これは、『演出』的なもの、すなわち、視線を誘導したり、ユーザーに何らかのアクティビティを実行するように導びいたりする方法 ― などにより関係が深いと思われます」と彼は言います。

これら多様な語彙が共通して現れるところと差異が、Foster 氏の研究と教育を刺激する創造的探求のための、非常に肥沃な土地であると考えています。

投資収益率: 学生が最も必要とするスキル

Foster 氏は、どの学生もつまずくような一般的な領域というものは 1つではなく、カリキュラムに参加するすべての人にとって異なると考えています。「よく見られるのは、デザイン分野に強いけども、技術分野に弱い、というのがあります」と彼は言います。「逆に、技術分野に強く、デザインに弱いというケースもあります。ちょうど中間という場合もあります。そして、これら 3つのパターンには危険領域があります。それは目標が何であるかにも依存します。AAA スタジオで働きたいのなら、デザインかテクノロジーのどちらかを究めたスペシャリストになる必要があります。」 
画像協力: ロチェスター工科大学
Foster 氏は、教員と Epic のコミュニティとの間で進行中の議論について触れています。「投資収益率には非常に大きな関心がもたれています。特にお金がかかる大学教育の場合には、その関心は高いです」と彼は言います。「また、興味深いことに、あるスキルは逆転現象も起きています。批判的思考やコンセプト創出などは、再び脚光を浴びるようになっているのです。」Foster 氏は、適応性に焦点を当てています。新たなスキルセットを素早く追加できる能力や、批判的かつ創造的に思考できる能力も必要と言います。さらには、コラボレーションによるワークフローの習得も重要なスキルだとしています。 

「これは難しいスキルです。普通、大学でグループ プロジェクトに取り組みたがる人はいません」と Foster 氏は笑います。「しかし、私たちは確かにそのスキルを理解しようとしています。なぜかと言うと、凄いスタジオに入った学生たちは、戻ってくると全員こう言うからです。『いいですか?人と協力できること、コミュニケーションをとれることは、必須のスキルセットなのですよ!』」
画像協力: ロチェスター工科大学
RIT の新しいカリキュラムは、学生が深く理解することを勧めるだけでなく、幅広いスキルを早いうちにマスターすることを奨励しています。Foster 氏は、Epic のロードマップに常に注目しています。Epic の方向性と開発中の新しいツールを教えてくれるガイドとなるからです。Foster 氏のアドバイスを聴いてみましょう。「マルチステップ ワークフローによりボタンを作成するような場合、私なら学生にマルチステップ ワークフローを教えないようにします。」

Epic MegaGrant が教師の正しさを保証

Foster 氏によるこの多分野結束的なコースでは、3D グラフィックスとデザインがあるところならどこでも働けるように学生は教育されます。事実、世界中で仕事を見つけてきました。ロボット工学や家具のデザイン、エンターテインメント業界で働いてきたのです。ただし、このような新しい学際的なアプローチをカリキュラムに導入するならば、摩擦が生じる可能性もあります。しかし、Foster 氏は、MegaGrant を受け取ることによって、彼のアイデアが信頼できるものであることを同僚の学者の何人かに納得させることができたと考えています。 

Foster 氏は、最後に次のように述べています。「正しさが証明されることは素晴らしいことです!Epic Games、ありがとう!」

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