Image: BetaPort System © Urban Beta

Unreal Engine が不動産デベロッパーによる都市計画マスター プランの策定を促進

2022年9月7日
都市計画マスター プランの策定は不動産開発プロセスに不可欠ですが、プロセスにおいて最も困難な点の 1 つでもあります。デベロッパーは、投資を取り付けるために、コンセプトを具体化して示す前の段階で計画について意思決定者に伝えることができなければなりません。設計の意図を伝え、開発が周辺地域に与える影響を明らかにするだけでなく、関連する全体的なデータすべてを活用して、数年あるいは数十年にわたる開発の様子がどのようなものになるかを示す必要があります。

これまでの記事では、デベロッパーがリアルタイム テクノロジーを活用して新築住宅の販売高級物件を紹介するための次世代の販売ツールの作成に取り組んでいる様子を説明してきました。しかし、リアルタイム テクノロジーは開発のライフサイクルの冒頭から使われるようになっています。デベロッパーは静的な 2D の図面と文書によるレポートから離れつつあり、リアルタイム テクノロジーを活用したイマーシブな 3D 計画策定環境の導入を進めています。Unreal Engine を利用すると、マスター プランの初期計画や設計に関する調査について伝えやすくなります。これによってプロセスを効率的で人を引きつけるものにし、早期に意思決定を行って開発をスケジュールどおりに進めることができます。
 

オーストラリアのゴールド コーストに拠点を置くクリエイティブ スタジオ兼ソフトウェア デベロッパー、V2i Realtime は、マスター プランに関するイマーシブなアセットの開発に Unreal Engine を活用している企業の 1 つです。V2i Realtime は不動産コンサルティングの分野で数十年にわたる経験を有しています。現在では、リアルタイム テクノロジーを活用して、意思決定者が自信を持って必要な判断を下せるようにしています。

コンセプトを具体化して示す前の計画策定の迅速化

V2i Realtime はさまざまなツールを利用してプロジェクトのデータすべてを単一のインタラクティブ 3D 環境に集約しています。そして、Pixel Streaming を活用して、プロジェクトの関係者が任意のデバイスの Web ブラウザから仮想的なプロジェクト内を自由に探索できるようにしています。共通の視覚的言語を手に入れることで、混乱、誤り、誤解を防ぐことができます。また、関係者全員が提案について理解しやすくなり、情報に基づいた質問をして、適切な意思決定を行うことができます。使いやすいインターフェイスによって 3D のシーンを自由に探索したり制御したりできるようにするということを最も重視していますが、一方で、さまざまな視点からの 8K の映像、4K のアニメーション、360 度のパノラマ画像、VR エクスペリエンスなどのコミュニケーション資料をスピーディに生成することもできます。

V2i Realtime は、従来のビジュアライゼーション ソフトウェアと巨大なレンダー ファームを使い、それらではコストと時間がかかるとわかったあとで Unreal Engine に切り替えました。V2i Realtime の創業者兼マネージング ディレクター、Luke Brannelly 氏は次のように述べています。「私の 37 年の経験のなかで、Unreal Engine は業界にとって最も革新的なツールです。これまでは、専門的な 2D のデータとレポートについて第三者が理解する必要があり、多くの時間、エネルギー、費用がかかってきました。Unreal Engine はその問題を解決できます。Unreal Engine を使えば、プロセスの関係者全員が理解できる共通の視覚的言語を作ることで、意思決定者を含む誰もが結果について理解できるようになります」

こうしたデジタルのストーリーテリングにより、V2i Realtime はプロジェクトのライフサイクル全体におよぶ計画策定の複雑なプロセスを高速かつ効率的なものにしています。Brannelly 氏は次のように述べています。「ミーティングに参加して、結果について人々がすぐに理解し、情報に基づいて会話を進め、高速かつ正確に意思決定が行われる様子をじかに見ていると、自然と笑顔になります。場合によっては、以前であれば数時間、数日、数週間かかっていたかもしれないプロセスをほんの数分で終えられることもあります」

規模を伝えるコミュニケーション

不動産と投資を手がけるグループ Lendlease と V2i Realtime が協力したプロジェクトでは、V2i Realtime のアプローチが計画策定の初期段階をどう支援するかがよく表されています。そのプロジェクトは、オーストラリアのシドニーの南西部に作られる新しいコミュニティとして初めてのものになる Figtree Hill です。1,700 戸の新築住宅を誇るその地域開発はサステナビリティを重視したものであり、100% 再生可能エネルギーを利用するスマート ホームで構成されます。
Image courtesy of V2i Realtime
Lendlease にとっての主な課題は、プロジェクトの規模について多様な関係者に伝えることでした。その対象には、ニュー サウス ウェールズ州政府や地域の管轄官庁が含まれていました。オーストラリアでは計画を策定し開発の承認を得るプロセスに長い時間がかかることが知られており、そのためにプロジェクトが数年遅れることも珍しくありません。現場の環境、生態系、地形が課す制約にプロジェクトがどう対処するかについて、長期的なビジョンを伝えることが非常に重要です。特にこのプロジェクトでは、地域のコアラを増やし、その移動を促進するために、「コアラの回廊」を準備することを計画に含める必要がありました。

リアルタイム ビジュアライゼーションを利用した都市計画マスター プランの策定

Lendlease がこのプロセスを進めることができるようにするために、V2i Realtime は Unreal Engine のリアルタイム テクノロジーを使って空間的に正確な 3D モデルを作成しました。これによって、関係者が有意義かつ公正な議論と意思決定を行うことができました。
Lendlease Communities の国内プロダクトおよびプレース担当マネージャー、Paul Melrose 氏は次のように述べています。「承認にはまだ何年もかかります。リアルタイムのイマーシブなコラボレーション環境はさまざまな関係者が Figtree Hill のビジョンと設計の結果について理解を深めるうえで大いに役立つでしょう。また、V2i Realtime は、私たちが広いオーディエンスとつながり、イマーシブで有意義なオンラインまたはモバイルのエクスペリエンスを提供できるようにしてくれました。これはコミュニティにとってのメリットを理解してもらうことに役立つだけでなく、より重要な点として、早期の成約にもつながります」

こうした取り組みにより、Lendlease は設計と審議の段階を効率的に進められるようになっています。また、Figtree Hill のプロジェクトは、リアルタイムのバーチャル コラボレーション、意思決定、改善されたカスタマー エンゲージメントの最先端領域を支援し、理解を深めるための実例となっています。
 

「次のステップは Lendlease Metaverse を導入することです。Web ベースの 1 つのイマーシブな 3D の世界に、既存の開発と提案された開発のすべてを取り込みます。これによって、従来の考え方の多くの側面が根本的に変革されたり見直しを迫られたりすることになるでしょう。特に、Web のコンテンツ、バーチャルなコラボレーション、意思決定がその対象になります」と Brannelly 氏は述べています。

Cityscape Digital

ロンドンに拠点を置く不動産コンサルティング会社、Cityscape Digital も、リアルタイムのイノベーションで都市計画マスター プランの策定に変化をもたらしている先進的な企業の 1 つです。イギリスの市場に重点を置く Cityscape Digital は、デベロッパーが関係者や地域のコミュニティとつながることを支援する、計画策定の初期段階のためのツールを作成しています。
 
コンセプトを具体化して示す前の段階に取り組むほかの企業と同様に、Cityscape Digital にとっての主な課題は構想の設計を現実のものにすることです。Cityscape Digital のツールは、構想から完成まで、開発における建設の様子を関係者が視覚的に理解できるようにします。デベロッパーが投資家を引きつけ、管轄官庁、潜在的な借り手、地域のコミュニティと効果的につながるには、マスター プランの規模と複雑さ、そして時間に伴う変化を理解できるようにすることが不可欠です。
 
Image courtesy of Cityscape Digital

そういった課題を克服する必要があったデベロッパーの 1 つが、Cityscape Digital の顧客である British Land です。British Land は、ロンドン南東部にあるロザーハイズ半島で、40 億ポンド (約 6,400 億円) 規模のカナダ ウォーターの再開発に取り組んでいました。53 エーカーにおよぶそのプロジェクトでは、歴史的にテムズ川につながる波止場と水路のネットワークであった地域に、新しい都市のハブを作ることになっています。40 の建物を新たに作り、娯楽と文化的活動のための空間は 5 万 1,000 平方メートルにおよびます。カナダ ウォーターの開発のマスター プランは、Allies and Morrison によって策定されました。サザーク議会の協力のもと、British Land の Roger Madelin 氏が計画を主導しました。

柔軟かつ効果的なエンゲージメントの実現

そのプロジェクトでの主な課題は、大規模で複雑な開発の 15 年にわたるタイムラインを魅力的かつ効果的に示すことでした。Cityscape Digital は Unreal Engine を使って独自のインタラクティブ プラットフォームを開発しました。このプラットフォームには、レンダリング画像、映像、フェージング ツールなどのアプリケーションが含まれます。フェージング ツールはフェーズ 1 の多様性と進行中のマスター プランについて説明するうえで役立っています。
 
Cityscape Digital のシニア コンサルタント、David Munro 氏は次のように述べています。「Unreal Engine のおかげで、Cityscape Digital は、柔軟性に優れたツールと、視覚的なものやインタラクティブなものなど多様な資料を作ることができました。British Land はそれらを利用して、以前にはできなかった形で関係者とつながることができています。Unreal Engine を使えば、複雑なデータ セットを取得し、それをわかりやすい形で示すことで、柔軟性に優れた効果的なやり取りを促進できます。私たちが開発したフェージング ツールはその好例と言えます」
従来の 2D レンダリングに依存するのではなく、リアルタイムのアプローチをとることで、Cityscape Digital はリアルなビジュアライゼーションを提供し、イマーシブで信憑性の高いエクスペリエンスによって、複雑な計画に対する理解を深めることができています。Munro 氏は次のように述べています。「ここでは人間の視点が重要です。インタラクティビティを取り入れることで、リアルタイム テクノロジーを活かしたスピーディなイテレーションと意思決定が可能になり、より幅広いエンゲージメントを実現できます。カナダ ウォーターのプロジェクトのコンセプトを具体化して示す前の段階で成功を収めるには、従来の 2D の図面やレポートから離れることが不可欠でした」

British Land でカナダ ウォーターのマーケティングの責任者を務める Alexandra Maclean 氏は次のように述べています。「物理的なモデルで構想の全体像を確認できますし、現場に行って建設の進捗を実際に確認することもできますが、開発の途中の任意の時点である場所がどのような状態になっているか、潜在的な入居者や買い手に理解してもらうことができる必要がありました。そういった人たちが移ってくる時点で、何が取り壊されていて、何が建設中で、何が完成しているかわかる必要があったのです。Cityscape が開発してくれたフェージング ツールによってその問題が解決されました。このツールは、私たちが持つビジュアライゼーション ツールの包括的なスイートのなかでも重要なものとなっています。さらに、更新しやすいものでもあるため、開発プログラムの変化に容易に対応できます。これは革新的なツールです」
 

Morean と Urban Beta

ベルリンに拠点を置くスタジオ、MoreanUrban Beta も都市計画に革新的なアプローチを取り入れています。Morean は、最先端のクリエイティブ テクノロジーを利用して都市計画マスター プランのビジョンを示すことに重点を置き、さまざまな業界の仕事に取り組んでいます。Morean は、空間に関するイノベーションを起こすスタジオ Urban Beta と協力して、デジタル プランニング ツール Beta Builder を開発しています。このツールは、都市計画マスター プランの策定をコラボレーションに基づいて効率よく楽しく行えるようにするものです。
Image courtesy of MOREAN GmbH and Urban Beta UG
プラスの影響に焦点を当てている Urban Beta は、持続可能なオンデマンド型のモビリティ ハブを実現する、拡張可能なモジュール型の建築システムを提供しています。その BetaPort システムは世界中の業界パートナーとの協力によって作られたもので、循環経済がその基盤となっています。BetaPort は、モビリティについての将来のニーズやユースケースに対応する、適応性のある空間を提供します。そのために、予測に基づくプランニングを行い、最も効率的なレイアウトを割り出します。

BetaPort の循環型生産チェーンの起点となるのは、デジタル プランニング ツール Beta Builder です。このブラウザベースのコンフィギュレーターは、いくつもの異なる設計をリアルタイムで視覚化し、管轄官庁、都市計画家、地域のコミュニティなどの関係者や意思決定者をつなげるインタラクティブ コラボレーション プラットフォームとして機能します。Beta Builder はプロセスにゲーミフィケーションを取り入れ、楽しいものにしようとしています。
Image courtesy of MOREAN GmbH and Urban Beta UG
Morean のファウンディング パートナー、Philipp Eckhoff 氏は次のように述べています。「コンフィギュレーターは楽しく効率的に計画できるように設計されました。計画策定での失敗をなくし、建設のコストを予測し、生産データを作成することを目指しています。また、フォトリアルな画像をリアルタイムで作成し、将来の設計について理解できるようにします。問題となったのは、これらすべての機能を 1 つのインタラクティブでレスポンシブなアプリケーションにまとめ、使いやすく楽しいものにすることでした」
 
BetaPort のコンフィギュレーターとして機能するクラウドベースの Beta Builder プラットフォームは、すべてのデータ、コストとエネルギー消費の概算、カスタムのアルゴリズムを利用して意思決定を行います。そのダッシュボードには生産時間の予測まで表示されます。視覚的なフィードバックを即座に得られるため、以前は確認できなかったデータとプロセス、そしてそれらの相互の関係について、関係者が視覚化、比較、最適化できるようになります。
Beta Builder の開発を始めるにあたり、Morean と Urban Beta は Unreal Engine のリアルタイム機能を利用しました。「プランナー向けのゲームを作っていたようなものだと言えます。そのインタラクティブなプロセスにはモジュールが多く、さまざまな可能性が考えられたので、大量のテストとプログラミングが必要でした。最終的な成果をリアルタイムで示すことができるゲーム エンジンは非常に貴重でした」と Eckhoff 氏は述べています。
Image: BetaPort System © Urban Beta
利用したものとして、Eckhoff 氏は特に 2 つの機能を挙げています。1 つはビジュアル スクリプティング システム ブループリント、もう 1 つは Datasmith です。Datasmith を利用すると、CAD、BIM、DCC の一連のアプリケーションからシーン全体をシームレスにインポートできます。Eckhoff 氏は次のように述べています。「1 つのソフトウェアから、ブループリントの機能に取り組み、タッチベースの入力をテストして、ユーザーの視点ですべてを確認できました。また、Datasmith を利用したおかげで、あらゆるジオメトリ、マテリアル、コリジョン オブジェクトをスムーズにインポートできました。Unreal Engine によってプロセス全体が非常に効率的になりました」
 
Urban Beta は Beta Builder を使って BetaPort を低コストでスムーズに設計できました。Beta Builder は、意思決定を迅速かつ自動的に行えるようにするだけでなく、生産や組み立てのデータなどの詳細情報を扱うこともできます。
 
ここで紹介したプロジェクトは、都市計画のパイプラインに開始時点からリアルタイム テクノロジーを組み込むことでプロセスをどのように合理化できるかを表しています。プロジェクトのデータを 1 つのインタラクティブ 3D 環境にまとめることで、都市計画マスター プランについて効率的にコミュニケーションをとり、建設に遅れが生じないようにすることができます。

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