Yuki 7 は Chromosphere の著作物です

Yuki 7 が 2D/3D のハイブリッド アニメーションのためにリアルタイム パイプラインに切り替え

2022年1月28日
マイクロ シリーズ Yuki 7 のエピソードを観ると、自分は一体何を観ているのだろうと思うかもしれません。スパイ スリラー、1970 年代風のアニメ、それとも女性の力について真剣に取り扱っているアクション/アドベンチャー シリーズ?

実際にはそれらすべてです。YouTube での再生回数と称賛から判断するに、Yuki 7 は、カラフルなキャラクター、十分にテクスチャを施された 3D 環境、1960 年代と 1970 年代のスパイ映画のスタイルを好む人たちの間でヒットしているようです。
 
Kevin Dart 氏は、ロサンゼルスに拠点を置くスタジオ、Chromosphere で CEO 兼クリエイティブ ディレクターを務め、賞を獲得するなど高い評価を受けています。Dart 氏は、Yuki 7 の制作にあたり、当初は従来の 2D/3D パイプラインを使いましたが、シリーズの途中で Unreal Engine へと切り替えました。これは、シリーズの特徴である 2D のスタイルを保ちながら、リアルタイム パイプラインのメリットを享受するためでした。

Yuki 7 の「メイキング」動画もあります。Chromosphere チームが Yuki 7 の世界のスタイルと存在についての詳しい Unreal Engine でのプロセスとパイプラインを説明しています。
 
Chromosphere は従来のパイプラインからリアルタイム パイプラインへの移行についてのケーススタディを自社サイトで公開しています

Yuki 7 の誕生

Yuki が生まれたのは最近のことではありません。2009 年の書籍、Seductive Espionage: The World of Yuki 7 と、偽の映画 A Kiss From Tokyo のトレーラーに登場したほか、2013 年には小像が限定生産されました。Yuki は、Dart 氏によるイラストレーションのスタイルのファンから、長年にわたって支持を集めてきました。

その間 Dart 氏は、パワーパフ ガールズ: ダンスパンツにご用心!カルメン・サンディエゴ シリーズに携わってきました。鋭い視聴者はこれらの作品に共通点を見出すことができるでしょう。それは、多少のアクションを厭わない、強い女性のキャラクターです。Yuki もその流れを汲んでいます。

「Yuki は私にとってとても特別な存在です。というのも、妻からインスピレーションを得ているからです」と Dart 氏が言及しているのは、City of Ghosts のクリエイターで、Yuki 7 のエグゼクティブ プロデューサーを務める、Elizabeth Ito 氏です。「Elizabeth が自分の信じるものを守り不利な戦いに挑む様子に、いつも刺激を受けています。Yuki は Elizabeth の情熱と意欲を反映しています。また、白人男性がヒーローを務めることに誰もが慣れきってしまっている、アクション映画やスパイ映画というジャンルに対する反動でもあります」
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また、Yuki は年月をかけて現在の姿へと進化してきました。「2009 年にプロジェクトを開始したころには、インスピレーションの源泉となっていた範囲は狭く、ミッドセンチュリーのデザインと古いスパイ映画が中心でした」と Dart 氏は述べ、シリーズの制作が進むにつれて、1970 年代の SF や巨大なモンスターが登場する映画など、さまざまなものやイメージを利用するようになってきたと付け加えています。
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「そうしたものからもインスピレーションを得られるようにしたことで、プロジェクトの作業は常に楽しいものになっていて、10 年以上経っても新鮮に感じることができています」

リアルタイムのパイプラインへの移行

Yuki 7 の制作を開始した当初、チームは、June やパワーパフ ガールズの特別番組などのプロジェクトでうまく機能した、馴染みのある 2D/3D パイプラインを使っていました。そのプロセスでは、Maya で 3D のキャラクターのアニメーションを作成してから、レンダリング結果に対して After Effects で多くの処理を施し、2D アセットと組み合わせてユニークなルックを実現していました。

エピソード 1 と 2 はそうやって問題なく制作されましたが、Dart 氏は、そのテクニックとスタジオがすべてのプロジェクトから学んだことをどこまで追求できるか確かめたいと考えていました。

「当社のリード クリエイティブ コンポジター、Stéphane Coëdel は、2009 年の最初期から Yuki 7 のプロジェクトに参加しています。Stéphane はスタジオ創設当初から、アニメーションのルックの開発を推進してきました。最近製作した Yuki についても、Stéphane が After Effects でのすべてのテクニックを生み出しました。3D のライティングを処理し、ハーフトーンやラスター ラインなど、さまざまなパターンを適用して、私たちが目指していた、モダナイズされた 1970 年代のテレビ番組風のハイブリッドのルックを実現できるようにしてくれました」
Yuki 7 のエピソード 3 では、チームはエピソード全体の Unreal Engine での制作に乗り出しました。「Maya から After Effects へと進む従来のプロセスでは、ライティングを施し、レンダリングして、合成を行ったあとにシーンが実際どのように見えるか多少なりともわかるまでに、何か月もかかることがよくありました。多くの想像力に加えて、プロセスが最終的にはうまくいくと信じることも求められました」

Unreal Engine に移行したことで、チームの各メンバーがエピソード全体をレイアウトの段階から確認できるようになりました。これによって、各ショットを作成するなかでさまざまな選択肢を作り出し、検討できるようになりました。
 
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リアルタイムのパイプラインへの移行には多少の作業が伴うことはわかっていましたが、Dart 氏率いるチームの決意は固いものでした。「まず、テクニカル アート ディレクターの Theresa Latzko が Unreal Fellowship に登録し、4 週間の集中コースでエンジンについて学びました。Theresa は City of Ghosts Age of Sail などのプロジェクトでも 3D のルックの開発を支援してくれています」

学習を終えた Latzko 氏はスタジオに戻り、Unreal Engine でライティングとシェーディングのプロセスを細心の注意を払って構築しました。それは、Chromosphere が After Effects で使っていた 2D のプロセスを模した形になっていました。たとえば、ライトの処理とバランス調整を行ったり、ハーフトーンとラスター ラインのパターンを適用したりするためのコントロールが作成されていました。
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Unreal Engine のメリット

Unreal Engine に組み込まれたノンリニア アニメーション エディタであるシーケンサーが、チームのアーティストに大きなメリットをもたらすことがわかりました。Dart 氏は次のように述べています。「以前のパイプラインでは、アーティストはそのとき自分が作業を行っている 1 つのショットしか見ることができませんでした。ほかのショットを見るには、誰か時間がある人がすべてのアニメーションを集めてきて編集中の映像を更新するまで待つ必要がありました」Unreal Engine では、いつでも誰でもシーケンサーでエピソードを見ることができ、エピソードには全員の最新の作業が反映されています。「アーティストがエピソード全体についての多くのコンテキストを得られるようになりました。全編を通じて再生し、シーケンス全体の様子を確認できます」
 
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Unreal Engine のパイプラインではぎりぎりでの変更も可能になり、チームがアイデアをテストしやすくなりました。「エピソード 3 の制作の終盤で、あるショットのカメラの動きについて別の考えが浮かびました。従来のパイプラインであれば、制作の終盤でカメラに変更を加えようとすると、Maya に戻ってアニメーションを作成し直し、再度レンダリングして、最後にショットを再度合成する必要があります。Unreal Engine では、リード アニメーターの Tommy Rodricks がカメラを動かすだけのわずか 15 分ほどで済み、変更を加えることができました」

Yuki 7 で時間の節約に最も貢献した Unreal Engine の利点の 1 つとして、エフェクトへの Niagara の利用が挙げられます。「エピソード 3 では、ボートの後ろの水しぶきなどのために、Theresa がエフェクト システムを作ることができました。このシステムは、ボートが登場するすべてのシーンで自動的に有効になります。水しぶきをいくつか作るだけでよく、あとは水しぶきが必要なショットでそれらを複製して配置することができました」Dart 氏によると、個々のショットのすべてのエフェクトについて Flash で手作業でアニメーションを作成していた Yuki のエピソード 1 と 2 のプロセスと比べると、Unreal Engine の自動化されたシステムでは時間を大幅に節約できました。
 
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将来の計画

Dart 氏は、Chromosphere が Unreal Engine について学んだことをほかのプロジェクトに応用できることをさまざまな面で期待しています。実際、Chromosphere はすでに Mall Stories という新しい短編作品を Unreal Engine を使って制作し始めています。この作品では Elizabeth Ito 氏がディレクターを務めます。

Yuki 7 のユニークな 2D ベースのスタイルは Unreal Engine に適していることがわかり、Chromosphere にとっては新たなチャンスが到来しました。たとえば、Dart 氏は Yuki の将来の冒険にインタラクティブ性を取り入れることに大きな可能性を見出しています。

「アートとデザインに力を注ぐ小さなスタジオとして、アニメーションの視覚的な可能性を広げることができるものには常にわくわくします。Unreal Engine はアートの新しいビジョンを生み出すための新しい方法やアイデアを多数もたらしてくれています。アニメーションに Unreal Engine を活用する最前線に立つことができて嬉しく思っています」
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